碧草の風

mintmmks.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

「空気人形」

「空気人形」 (2009年 日本映画 監督是枝裕和)

切なさに満ちた映画のなかで、吉野弘の詩「生命は」が効果的に使われている。
われわれの生命は欠如を抱えていて、他者から満たしてもらわなければ、生きてはいけない。
あるときは、誰かのために花粉を運ぶ虻であったり、誰かのための風だったりする。
気付かないかもしれないけれど、どこかで、人は人とつながっているのだ、という詩だ。

男に使われていた空気人形が、心をもってしまい、街へと歩き出す。
ファンタジーのような話ではあるが、ラストは悲惨だ。
不要になった人形は燃えないゴミで、死んだ人間は燃えるゴミ。
その言葉が妙にリアルに響く。
人間を傷つければ、血がでる。人形は人形のままだ。
人間は、はかない命なのに、その上、孤独だったりする。

人間とかかわるより、人形と一緒のほうが面倒がなくていいと男はいう。
人形の、のぞみが恋したジュンイチは、虚しさを抱えている。
交番で寂しさをまぎらわす老女。
みんな中身はからっぽだという、代用教員だった老人。
年をとることが不安な女。
それぞれの思いは、一方通行。
人形ののぞみを通して、それぞれの孤独が浮き彫りにされる。
でも、みんな誰かのための誰かなのだ、きっと…

ペ・ドゥナの「人形振り」がすばらしい。
歩き方、喋り方、空気の入り方。
彼女の存在感がなければ、これほどの説得力は生まれなかったと思う。

ただ、ジュンイチの行動が、私にはよくわからなかった。
のぞみの空気が抜けたときに、オドロキもせず、すぐにセロテープをもってきたときには、「?」だった。彼は、いったい何を考えていたのだろう?
by mint-de | 2009-09-30 15:23 | シネマ(あ~そ) | Trackback
トラックバックURL : http://mintmmks.exblog.jp/tb/10283919
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。