「ずっとあなたを愛してる」

「ずっとあなたを愛してる」 (2008年 フランス・ドイツ映画 監督フィリップ・クローデル) 

フィリップ・クローデルの『灰色の魂』と『リンさんの小さな子』を読んでいて、人間の繊細な心情を描ける作家だと思っていたので、自ら脚本を書き、監督した映画ということで、期待して観にいった。

息子を殺して15年の刑期を終えてでてきたジュリエットの孤独と苦悩、彼女の妹レアの姉への献身的な愛情に、胸打たれる映画だった。
年の離れた姉妹で、姉が事件を起こした時には、まだ子どもだったレア。
両親からは、姉はいないものだと思えといわれてきた。でも、姉を慕っていたレアは、姉のことをずっと思っていたので、出所した姉を自宅へ迎える。
レアの夫は、表面的にはジュリエットとの同居を認めているが、心の奥では殺人者として見ている。彼らの子ども2人は、ともにベトナムからの養女(一人の女の子は監督の養女)。
ジュリエットは事件のことには一切触れず、妹にさえ心を開こうとはしない。周囲の人間も、ジュリエットに理解のある者、彼女を罪人としか見られない者、さまざまだ。
妹一家と暮らすうちに、ジュリエットに少しずつ変化が現れ、再生への希望が見えて映画は終わる。
私は、ジュリエットより、レアの姉への愛情に感動した。
事件のことはよく知らないのに、全面的に姉を受け入れる、その寛容さに驚く。
勤めている大学で、教え子たちと殺人者の心理について討論している場で、レアが激昂する場面がある。レアにとって、姉の殺人は、とうてい理解できない事件だったのだ。他人がわかったように罪人の心理を語ることに我慢ができなかったのだろう。家族に犯罪者を持つことの苦悩が、現れていたシーンだった。

レアの姉への思いやりに、人に対する究極の優しさを見た思いがする。
ジュリエットの孤独感も痛切に迫ってくる。
つらい人生でも、どこかに明るい光が、ほのかに差しているように感じられる映画だった。
by mint-de | 2010-01-14 14:44 | シネマ(あ~そ)