『武士の娘』

『武士の娘』 (杉本鉞子著 大岩美代訳 ちくま文庫)
ある本に、『武士の娘』という本の紹介があった。越後・長岡藩の家老の家に生まれた娘(明治6年生まれなので、正確には武士だった人の娘ということになる)が、明治時代にアメリカに住む日本人と結婚し、自分が育った長岡や結婚後に住んだアメリカでの生活を綴った本で、1925年にアメリカで出版後、7か国語に翻訳された本だという。
そんな昔に、世界中で読まれる本を書いた女性がいたなんて、全然知らなかった!(私が無知だっただけ?)
読んでみたいと思っていたら、偶然、本屋さんでこの本を発見! 
早速、読み始めた。とても面白かった。

厳しくしつけられた鉞子(えつこ)さんの生活態度やお言葉に、読んでいるほうも身がひきしまる思い(^^)。
彼女は日本の古い伝統や風習を守りながらも、異国のアメリカではその風習や環境の違いにも臆することなく順応できた女性だった。人種や国の違いはあっても、人は理解しようと思えば理解できる、そういうこともおっしゃっている。当時の日本の様子や女性が何を考えているのかという物珍しい気持ちが、世界の人々の興味を誘ったのだろうが、彼女の広いものの見方も、世界の人々に受け入れられたのだと思う。

この本は英語で書かれたものを、別の方が、彼女の指導を受けながら翻訳されたものだが、その奥ゆかしい文章も魅力的である。
彼女の子ども時代、勉強しているときには、安逸を求めてはならないということで、雪の降る日に火の気のないところにいて、冷たくなった手を女中さんが雪で暖めてくれた話や、武士の娘は、寝る時には、「きの字」になって寝る(犬が四足を投げ出して横になるスタイルかな?)とか、現代人の私には「へぇ~」と驚くことばかり。
また、幕府側で戦った長岡藩の最後の頃の様子や、その後の困窮した生活ぶり(といっても爺やや女中さんがそのままいたのだから、結構裕福だったのだろうな)、維新後の人々の日常も興味深かった。

祖先を敬い、年中行事を心をこめてこなし、昔からの教えに忠実に生きてきた人々。
鉞子さんは、そういう日本に愛着をもちながらも、子どもの教育のために、一度日本に帰国後またアメリカへ渡るのである。

あの時代にあって、彼女は日本人の慎ましさとアメリカ人の自由な精神を、その身に受け入れることができた女性だったのだ。彼女は、「温故知新」や「郷に入っては郷に従え」という格言を、身をもって実践した人のように思える。
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by mint-de | 2010-01-24 13:34 | 私の本棚 | Trackback

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