「ディア・ドクター」(DVD)

「ディア・ドクター」 (2009年 日本映画 監督西川美和)

村でたった一人の医者が失踪した。
その医者を捜すうち、村人たちは、彼が医者ではなかったと知らされる。
「?」
自分たちの命綱として頼りきっていた男が、ニセモノだったなんて…
ところで、ホンモノの医者って、どんな医者?

研修医の相馬は、山間の小さな村にある「神和田村診療所」にやってくる。
そこで3年半勤めている伊野は、村のなかに溶け込み、村人に信頼されていた。
伊野は、診療所に来られない患者には自分からでかけていき、時には無料診療もいとわない医者だった。
相馬は、経営のことしか頭にない自分の父親と比べて、患者の気持ちを大事にする伊野の素晴らしさに気付き、研修が終わったらここに来たいとまでいいだす。
しかし、伊野は、相馬の言葉に「自分はそんな人間ではない。ニセ医者や」という。相馬は自虐ネタとしかとらえられなかったが、それは伊野の本心だった。

伊野が、なぜニセ医者になったのかはわからない。ただ、父親が医者で、伊野自身はペースメーカーの営業をしていたことがわかった。
診療所に薬を届けていた男は、捜査中の刑事に、医療の現場に関わる者には、医者じゃなくとも患者を助けたいという気持ちがわいてきたり、一度先生といわれるとそんな気分を味わいたくなるかもしれないと語る。

伊野は、自分のウソに追いつめられていた。気胸の患者を目の前にして、気管に穴を開けることができなかった。看護師の大竹の指示で、なんとか施術することができたけれど。
伊野は、一人暮らしの鳥飼という女性が末期の胃がんだとわかったが、鳥飼は、病気に気付いていて、病院でいろいろいじられるのは嫌だといい、家族には話さず、ウソをついてくれと伊野に頼む。鳥飼の願いを聞き入れた伊野だったが、鳥飼の娘で東京の病院に勤務する医者りつ子を前にして、母を心配する娘の態度に、ウソをつけなくなる。そして、姿を消した。

相馬は、伊野がニセ医者だったことにショックを受け、刑事には本心を語ろうとしなかった。彼が一番可哀相だと思うけれど、どういう医者が患者のためになるのかということは、学べたはずだ。
鳥飼は、伊野が去ってから、りつ子の病院へ入院する。りつ子は、伊野が医者ではないとわかっても、彼が母の最後までどう向き合うつもりだったのか聞いてみたいといっている。娘としては母の病気を治してもらいたい。しかし、医者としてはそれは無理だとわかっている。母にとってどういう選択がよかったのか。医者のりつ子にも迷うことだったのだ。
患者の心に寄り添いながら、患者を診ていた伊野。
村人達は、伊野が医者ではないと知らされても、どこか半信半疑の態度。
伊野を雇った村長は、刑事に向かって、その警察手帳は本物かと尋ねる。
確かに、ホンモノとニセモノの見極めは難しい。資格や証明書を持っていても、その仕事に値する人間かどうかは、仕事ぶりにかかっている。証明書の上にあぐらをかいているような人間もいる。

ホンモノかニセモノか?
何が善で、何が悪なのか?
過疎化、高齢化、無医村。
ユーモアを交えながら、今の問題に切り込んだ脚本が、とてもよいと思った。
まだ、30代の西川監督、これからも楽しみだ。
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by mint-de | 2010-02-24 20:47 | シネマ(た~ほ) | Trackback

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