「レオニー」

「レオニー」 (2010年 日本・アメリカ映画 監督松井久子) 

レオニー・ギルモアという一人の女性の生き方に、心打たれる映画だ。
有名な彫刻家イサム・ノグチの母という形容詞がつかなくとも、逆境にあっても、自らの信じる道を貫いて生きた、その生き方に、人間としての強さに、私はとても感心した。

1901年ニューヨーク、レオニー・ギルモアは編集者募集の3行広告を見て、日本人のヨネ・ノグチという詩人に会う。ヨネは英語で詩や小説を書いていて、自分の作品をもっと魅力的なものにするために編集者を探していたのだ。レオニーはヨネの才能を認め、ヨネはレオニーの仕事を評価した。二人は一緒に作品を仕上げていくうちに、恋に落ちる。

しかしヨネという男は、レオニーの妊娠を知ると、花瓶の花をぶちまけてウソだと怒りだすような男だった。ヨネが日本に帰国後、失意のレオニーは母がいるカリフォルニアに身を寄せ、男の子を産む。ヨネには頼らずに、カリフォルニアの大自然のなかで子育てをしていたレオニーだったが、息子が日本人であることでいじめられ、ヨネから東京で仕事をしないかという誘いもあって、子どもために日本へ行くことを決意する。

二人を迎えたヨネは、息子を勇と名づけ、女中付きの家を用意する。そして、英語の個人指導の仕事ができるように、「生徒」も探しておいてくれた。だが、ヨネはいつもどこかへでかけていく。問い詰めたレオニーに、ヨネは妻のもとへいくのだと答えるのだった。そんなヨネに我慢できず、レオニーは家をでる。粗末な家に引っ越したレオニーは、その後、小泉八雲の未亡人セツと知り合い家族ぐるみの付き合いをし、英語の生徒たちとも親交を深め、日本の生活にもなじんでいく。

二度目の妊娠後、地方都市で教師として働き、その土地で家を建てることにしたレオニーは、わずか10歳のイサムに家の設計をやらせる。イサムは母のために、富士山の見える丸窓を考案する。次第に戦争の色が濃くなると、息子が徴兵されるのを危惧したレオニーは、14歳のイサムを一人でアメリカに渡らせる。イサムがアメリカに行ってから数年後、レオニーは娘を連れてアメリカに帰国。
晩年は、一人でメイン州の田舎に暮らした。自然の中で、まるで自然にかえるようにひっそりと、その生涯を閉じたのだ。

レオニーは、はじめはヨネを愛していたのだろう。だがその後は、息子の父親という理由だけで付き合っていたのだと思う。芸術家としては、ヨネを尊敬していたようだ。だから息子に芸術の道を歩めと勧めたのだと思う。それにしても、レオニーは芯の強い女性だ。あの時代、シングルマザーとして生きていくには、いろんな困難があっただろう。それも異国で、言葉も習慣も違う国で、偏見のなかで、自分を貫いたその強い意志には驚かされる。
ヨネも身勝手な男のようだが、彼なりの誠意を尽くしていたのではないだろうか。あの当時の男の価値観が、アメリカの名門大学を出たレオニーに受け入れられるはずもない。それでも、レオニーは息子の父親ということで、ヨネはよき編集者として互いを必要としていた。
レオニーが帰国する前に、ヨネと二人で歩く桜並木(千鳥が淵?)のシーンが印象的だ。
ヨネは従順な女を妻にしたが、それでよかったのだろうかと口にする。何も答えずに一人去っていくレオニー。レオニーには、夫は必要ではなかったのかもしれない。
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by mint-de | 2010-11-26 15:44 | シネマ(ま~わ) | Trackback

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