「おみおくりの作法」

「おみおくりの作法」  (2013年 イギリス・イタリア映画 監督ウベルト・バゾリーニ)

タイトルは妙なのだけれど(原題は「STILL LIFE」)、作品はとても気に入った。
ロンドンのある地区の民生係ジョン・メイ。彼の仕事は、身寄りがなく一人きりで亡くなった人の「後片づけ」だ。部屋の中から亡くなった人の「手がかり」を見つけ、知り合いをたどりそれでも誰も見つけられなかったら、彼一人で「葬儀」に立ち会う。
ジョンは調査が終了すると、彼が見送った人々の写真を書類から抜き取り、自分のアルバムに貼っていた。知り合いの誰にも見送られなかった人たちを、自分だけは忘れないと思っているかのように。
だが、真面目に仕事に励んでいたジョンは、ある日、上司に解雇をいい渡される。その丁寧な仕事ぶりが、逆にあだとなってしまったのだ。
最後の仕事は、ビリー・ストークという男で、ジョンの部屋の真向かいに住んでいた。近所だったのに知らずにいた男の存在が、ジョンにショックを与える。部屋に残された大量の酒瓶と古いレコード、そして娘らしき少女の写真を貼ったアルバム。それらが語りかけるものに憑かれたジョンは、最後の仕事にそれまで以上の情熱を傾ける。
写真のフィルムから娘へとたどりついたジョンは、その娘と親しくなりそうになるのだったが…

ジョンが忘れまいとしてアルバムに貼っていた亡き人々が、墓前に集まるラストシーンは、感動的だ。まるで、このシーンのためにストーリーがあったような気さえしてくる。
多くを語らない淡々とした映像は、逆にさまざまなことを考えさせる。
予期された死や突然の死、命はいつかは終わる。その地上にある最後のときに、どんな人生であったとしても、それまでの人生を称えて見送る。それが生きている者が行うべきことなのだろう。
by mint-de | 2015-02-05 11:49 | シネマ(あ~そ)