碧草の風

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『その罪のゆくえ』

『その罪のゆくえ』 (リサ・バランタイン 高山真由美訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)

切なさに満ちた小説だった。
少年ダニエル(ダニー)はヤク中の母から引き離され、里親の元に預けられていたが、その反抗的な態度から里親を探すのも困難な状況になっていた。
そんなとき、農場のミニーという女性がダニーの里親になってくれることに。
はじめは、反抗的で母のもとに帰りたがっていたダニーだったが、ミニーの寛容で温かな愛に包まれていくうちに、ダニーは今まで経験したことのない穏やかな暮らしを知るようになる。
そして里親から養母となったミニーから、将来の夢をもつことの大切さを教えられたダニーは勉強にも励み、大学へ。
だが、あるときダニーはミニーのついた嘘を知ってしまう。それは、ダニーにとって決して許すことができない嘘だった。そのときから、二人は会うことはなかった。
切ないのは、ダニーがミニーの死を知ってから、自分がとった態度が間違いだったと気づき、そのことをミニーに伝えられないということだ。ミニーの愛の深さがやるせないのだ。

ロンドンで事務弁護士をしているダニーは、殺人容疑の11歳の少年セバスチャンの弁護を依頼される。その少年に会ったダニーは、自分の少年時代を思い出す。その後、家に帰ったダニーは、ミニーの死の知らせを受け取る。
物語は、セバスチャンの事件とダニーの少年時代が交互に描かれていく。
イギリスでは、10歳から大人並みに刑事責任を問われてしまうのだそう。
著者は、実際の事件からヒントを得たようだが、このセバスチャンはこのまま大人になったらとても怖いと思うのだが、ダニーとはまったく違う家庭環境でも、外見は恵まれているように見えても、愛のない家庭というのは脆いものなのだろう。

セバスチャンの母の頼りなさに、自分の母の姿を重ねてしまうダニー。
小さい頃は、あんな母でも自分が母を守ろうと必死の思いでいたが、大人になったダニーは、自分を大切に思ってくれた人が誰だったか、今、弁護士として働けるのは誰のおかげだったかと考えたとき、ミニーに対する申し訳なさで胸がいっぱいになるのだった。
劣悪な環境で育ったとしても、ひとすじの明かりのような愛があれば、人はまっとうに育つと信じたい。
by mint-de | 2015-09-15 14:56 | 私の本棚 | Trackback
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