碧草の風

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何もない風景

『アメリカの61の風景』 (長田 弘 みすず書房)

詩人の長田弘さんが、20年にわたって約10万マイルを車で旅した記憶を綴る、ロード・エッセー。
長田さんの透明感あふれる詩的な文章と、本質を突いた簡潔な言葉を道連れに、一緒に北米大陸を旅しているような気分になる。

アメリカの自然と文化を語りながら、通り過ぎる風景のなかから、あるいは目の前に広がる光景のむこうに、人生を思い、深く思索する。

本を読んでいると、吹きくる風の音や広大な草原の草のざわめきが、聞こえてくるようだ。
私が一番気に入ったのは、49「いつかノー・マンズ・ランドで」の中の文章。

「何もない風景のなかでは、何もかもがありありとして、不思議な透明さを帯びてくる。風が吹くと、草という草がいっせいにざわめいて、日の光がすばやく遠くへと移ってゆく。
何もない風景は、眺めることがぜんぶであるような景観をもたない。それでいて、旅がくれるものすべてをくれるのは、じつは何もない風景なのだ。
旅が旅するものにくれるものはナッシングにすぎない。そのナッシングを黙って見つめる。あるいは、そのナッシングの奥へ入ってゆく。旅が旅するものにくれるものは充実したナッシングだけなのだ、と思う。」

                                                
by mint-de | 2007-09-25 12:46 | 私の本棚 | Trackback
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