碧草の風

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『暗く聖なる夜』 (ハリー・ボッシュ・シリーズ9)

『暗く聖なる夜』 (マイクル・コナリー 古沢嘉通訳 講談社文庫)

出版されるのを待ち望んでいたボッシュ・シリーズの第9作目。前回で、永年勤めたロス市警を辞めてしまったボッシュ。
私は、刑事ではなくなったボッシュに、ちょっとガッカリしていた。組織のなかで、その組織からはみ出した行動をとり、四面楚歌のような状況におかれながらも、事件を解決していくところに面白味を感じていたので、刑事ではなくなったボッシュに、感情移入できるかどうか不安だった。でも、最初のページを読んだ瞬間から、そんな心配は吹き飛んでしまった。
今回はボッシュが「わたしは」と一人称で語る手法をとっているので、ボッシュの心理状態に寄り添うように読んでしまうのだ。

ボッシュは、刑事を辞めて、ほぼ1年。刑事ではなくなった自分を喜んではいるものの、辞めたことを後悔しない日々はなかった。そんなとき、強盗に撃たれ四肢麻痺になった元同僚から電話が入る。
映画製作会社の社員だった若い女性が殺された、未解決の事件を調べてほしいという頼みだった。それは、4年前の事件で、最初はボッシュの担当だったが、のちにロス市警の強盗殺人課に引き継がれた事件だった。

ボッシュは警察を辞めたときに、未解決の事件ファイルをコピーして、自宅に保管していた。自分が、なさねばならないことをわかっていたからだ。
自分は被害者たちの、死者たちの代弁をする、それが、おのれの使命なのだと。たとえ、警察のバッジがなくとも、社会にはびこる悪と不正に、敢然と立ち向かう、それが、ボッシュの「仕事」なのだ。

事件を解明しようとするボッシュに、ロス市警やFBIから、関わるなという横やりが入るが、そんなことをものとはせず、ボッシュは事件を解決に導く。
巧みなプロットと、ボッシュの魅力もますますアップして、このシリーズのなかでは、「ブラックアイス」「ラスト・コヨーテ」と並ぶマイベスト3の一つになった。

ジャズが好きなボッシュは、今回、サックスを習い始めている。毎回出てくるが、丘の上に立つボッシュの家のデッキから、ボッシュが眼下に広がる風景を眺めるシーンが、私は一番好きだ。ボッシュとビールを飲みながら、長田弘さんの詩「最初の質問」を聞けたらいいなあ(笑)。
(2005年9月記)
by mint-de | 2007-09-25 13:54 | 私の本棚 | Trackback
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