「エンジェルス・イン・アメリカ」

「エンジェルス・イン・アメリカ」   (2004年 アメリカ)

トニー賞やピュリツァー賞を受賞している同名の戯曲をドラマ化したもの。
同性愛とエイズを真正面からとらえ、さらに宗教観も絡めて、実に見応えのあるドラマだった。

警句に満ちたセリフの数々、夢や幻覚の心象風景を見事に映像化したシーン、加えて、アル・パチーノやメリル・ストリープといった名優たちの演技もすばらしく、このドラマも数々の賞を受賞している。

1985年10月、ユダヤ人のルイスは、祖母の葬式に恋人のブライアーを連れてくる。
その後で、ブライアーはルイスに、自分がエイズに侵されていることを告げる。
やがて、ブライアーの病状が悪化してくると、ルイスはすっかり怖気づき、彼のもとを去ってしまう。

孤独にエイズと闘うブライアーは、ある日、幻の声を聞くようになる。
そして、その声の主は天使として、ブライアーの前に現れる。

主要な登場人物は、この2人と天使のほかに5人。
ルイスと関係をもつようになる、モルモン教徒で裁判所の書記官ジョーと、その妻で薬物依存症のハーパー。
ジョーに司法省行きを進める大物弁護士で、エイズ患者となるロイ・コーン。
頼もしくて心優しい、ジョーの母ハンナ。
そして、ブライアーとルイスの友人で、黒人の看護師ベリーズ。

ロイ・コーンは実在の人物で、戦後、共産党や同性愛者を攻撃していたが、彼自身もエイズにかかったそうだ。このドラマでは、人間悪の象徴として描かれている。この役をアル・パチーノが演じている。
また、このドラマでは、俳優たちがいろいろな役を兼ねているのも面白い。
特にメリル・ストリープは、ハンナのほかに、ユダヤ教の白いひげをはやしたラビや、ロイ・コーンに死刑に追いやられた女役など、見事に演じ分けている。

ベリーズが語るセリフにこういうのがある。「私はアメリカが大嫌いなの」「夢物語と死にゆく人々」「国歌をつくった白人は自由を高く掲げた。誰も届かないように」「地上に自由はないわ」

そんなアメリカに暮らすブライアーは、天使たちの前で、こう叫ぶのだ。
「病気でも、希望がなくても、足りないものだらけで不完全でも、それでも生きたい」と。
ブライアーの「神は戻ってはこない。出て行ったヤツを訴えろ」というセリフに、このドラマのメッセージがあると思う。

悲惨な現状を祈りでは解決できない。そんなやりきれない現実の世界でも、生きたいと願う心があるかぎり、生き続けるのだという力強いメッセージ。

ロイ・コーンが息を引き取ったあとで、ベリーズは「敵を許すのはもっとも難しいこと」「許すことによって愛と正義が生まれる」という。
これはかなり含蓄のある言葉だ。敵とはいったい何だろう? エイズ、不在の神、醜い人間。
「汝の敵を愛せよ」という、聖書の言葉も思い出す。

信仰心のない身では、神も天使もピンとこないけれど、ラストの天使像の前で、
涸れた泉もまた水をたたえるというハンナの言葉に、救いを見出したような気がする。
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by mint-de | 2007-09-25 15:41 | 海外ドラマ(A~G) | Trackback

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