夏祭り

市内では、あちこちでお祭りや盆踊り大会が催されている。
浴衣を着た人を見かけたり、お囃子や花火の音が聞こえてくると、夏の華やいだ独特の季節感に、弾むような気持ちになる一方で、妙な切なさも感じてしまう。
花火のような一瞬の華やかさが、逆にそのあとの闇をより暗く感じさせてしまうのと、似ているかもしれない。

近所に、お祭りの好きなおじいさんがいた。露天商をしていた人で、ずっと、町のお祭りでおみこしをかつぐ子どもたちに、アイスをサービスしてくれていた。
お寺の境内でお祭りの準備をしていると、その様子をタバコを吸いながら、楽しそうに見ている人だった。

数年前、祭りの数日前だったろうか、私が境内から出て坂道を下りていくと、下のほうで、杖をついたおじいさんが立ち止まって、坂の上を見ていた。
夏の空の下、ちょうちんが道の両側を飾り、そのおじいさんが、まるで絵の中にいるように見えた。
坂を上ろうとしているようだったが、上る気力がないようにも見えた。ただ、祭りの気分を身体で味わうかのように、穏やかな表情で坂を見上げていたのだ。
翌年のお祭りを、おじいさんは見ることができなかったので、私はこのときの光景が、お祭りのころになると思い出される。たぶん、おじいさんは、お祭りが見納めになるのをわかっていたのだろう。

華やかさと切なさ、それが私の夏祭りのイメージだ。
by mint-de | 2007-09-27 14:57 | 記憶の鞄

見たり聞いたり、日々思うことをあれこれと…


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