碧草の風

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「ミリキタニの猫」

「ミリキタニの猫」 (2006年 アメリカ映画)

この映画を観たのがちょうど9月11日ということで、映画が終わったあと、プロデューサーのマサさんが登場して、いろいろ質問に答えてくださった。マサさんがこのドキュメンタリー映画に関わることになったのは、まったくの偶然だったと知りびっくりした。ニューヨークの映画の講習会で、マサさんが日本人だったことから、リンダ・ハッテンドーフ監督が声をかけてきて、ミリキタニさんが書く日本語を訳してほしいと頼まれたのがきっかけだったとか。リンダ監督がミリキタニさんを撮ることになったのも、ミリキタニさんの絵がほしいとリンダさんが声をかけたことから始まったのだから、このドキュメンタリーは、かなり偶然の産物といっていいのかもしれない。はじめに意図がないことが幸いして、逆に真実が現実を裏付ける貴重で感動的な映画になったのだと思う。

ニューヨークの路上で絵を描いているホームレスのミリキタニ。彼は、絵を売ったお金しか受け取ろうとしない。リンダ監督がミリキタニさんを撮り始めてから数か月後、あの同時多発テロが起こる。炎上するビルの煙で路上生活が困難になったミリキタニさんを、リンダさんが家に来ないかと誘う。ホームレスを自宅に呼ぶリンダさんは、すごい人だと思う。善意という言葉だけでは表現できない寛大な精神の持ち主だ。ミリキタニさんは、他人の家に居候をしている身なのに、結構わがままで、どっちがその家の主なのかわからないほどいばったりしているが、リンダさんは、優しくそれを受け止めている。

リンダさんは、ミリキタニさんの社会保障に関していろいろ調べようとするが、彼はクソッタレなアメリカ政府からの援助は一切いらないと息巻く。アメリカで生まれ、3歳から18歳まで広島に住んでいた彼は、軍人になるのが嫌だったことと、絵描きを目指していたので、戦前にアメリカに帰ってきた。しかし、戦争がはじまり日系収容所に強制的に収容されてから彼の人生は困難なものになっていった。

ミリキタニさんの絵には、その収容所と広島の絵が多い。戦争さえなければ彼の人生はこんな人生ではなかっただろう。短いけれど、立派な反戦の映画だと私は思う。そして、彼のホームレスになっても、誇りを持ち続ける精神力と怒りを失わない人間性、リンダ監督の温かさと優しさがこの映画の魅力になっていると思う。

残されていた収容所を再び訪れたミリキタニさんは、もう怒ってはいないとつぶやく。
彼は、やっと、つらい過去の出来事を、人生の思い出の一部として受け入れることができたのかもしれない。
80歳を越えても鮮やかな色使いで描きつづけるミリキタニさんの絵は、とても個性的でパワフルだ。
by mint-de | 2007-10-25 15:04 | シネマ(ま~わ) | Trackback
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