碧草の風

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『君のためなら千回でも』

『君のためなら千回でも』 (カーレド・ホッセイニ 佐藤耕士訳 ハヤカワepi文庫)

訳者あとがきに、この本が読者にとって至福のひとときになることを願ってやまないとあるが、本当にすばらしい物語だった。読んでいない人に、「ぜひ読んでみて!」と心からすすめたくなる本なのだ。来月には、同名の映画が公開される。映画もぜひ観たいと思っている。

作者のカーレド・ホッセイニは、1965年にアフガニスタンに生まれ、1980年にアメリカに亡命した。医者として働きながら、この小説を書いたそうだ。原題は「THE KITE RUNNER」(カイトランナー)。

まだ平和だったころのアフガニスタン・カブールでは、冬の伝統行事として「凧合戦」が行われていた。ガラス糸で手に傷をつけながら糸を繰り、空高く揚げて相手の凧を落下させる。そしてその落ちた凧を追って自分のものにする、その凧追いのことをカイトランナーというのだ。合戦後、子どもたちは手についた傷を比べあう。傷の多さが自慢になるなんて、今のアフガニスタンを暗示しているようで、切なくなる。

裕福な家の息子アミールと、召使いの子ハッサン。アミールが落下させた相手の凧を追うために、ハッサンは「君のためなら千回でも」という言葉を残して、かけていった。しかし、仲のよかった二人の関係は、その日から一変する。

この本は、アミールの嘘と贖罪の物語でもあり、誇り高く偉大な父と、父の求める強さを見せることが出来なかった息子との、親と子の物語でもある。愛と許し、人生において、大切にしなければならないことは何なのかと、問いかけてくる。

作者の祖国への想いが、この物語を書かせたのだろう。懐かしい故郷と少年時代、平和なままだったら、祖国を捨てることはなかったはずだ。今のアフガニスタンへの憂いと重なり、切なさに満ちている物語だ。
by mint-de | 2008-01-16 21:55 | 私の本棚 | Trackback
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