『大いなる救い』(「リンリー警部 捜査ファイル」第1話の原作)

『大いなる救い』 (エリザベス・ジョージ 吉澤康子訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)

4月からミステリチャンネルで「リンリー警部 捜査ファイル」が始まるので、復習の意味で第1話「裁きのあと」の原作を再読。ほぼ10年前に読んだものだったので、随分忘れている部分があり、新鮮な気持ちで読むことができた。
作者自身が「文学を書いている」と語っているそうで、確かにミステリ小説というより、人間の複雑な心模様を深く掘り下げた丁寧な描写は、文学作品のように重厚で読み応えがある。

リンリーが「伯爵」を継いでいながら、なぜ刑事になったのかというのは、最大の疑問ではあるけれど、この作品の前の出来事を描いた『ふさわしき復讐』を読むと、母や弟との不和、友人のサイモンを自動車事故でけがをさせてしまった罪の意識などから、他人がうらやむほどの人生ではないらしい。そして、サイモンの妻デボラとは婚約までした仲。サイモンとデボラの深い愛に気づき、結婚を諦めはしたけれど、まだまだ忘れることができないでいる。伯爵の令嬢ヘレンは、そんなリンリーの理解ある女友達だ(ヘレンとサイモンも婚約していたが、事故後に婚約を解消。結局リンリーとヘレンの関係が深まる)。

ヘイバース(原作はハヴァーズ)は、弟を亡くし病気の両親を抱えながらも、仕事に前向きに生きる巡査部長。仕事への強い気持ちが空回りして、周囲とうまくいかずパトロール勤務に落とされたところに、犯罪捜査部に戻る仕事を与えられる。それは、ヘイバースが軽蔑している上流階級の気取り屋、リンリー警部と組む仕事だった。もう一度やり直したいと思っているヘイバースは、我慢して上司の命令にうなずき、事件を解決するためにヨークシャーへ。

気持ちが先走ってミスをするヘイバースに寛容なリンリー。ヘイバースの鋭い観察眼に一目おくリンリー。仕事を進めていくうちに、ヘイバースは、自分が思っていたほどリンリーが嫌なやつではないことに気づいていく。

娘は父親を殺害したのか? この事件では神父が重要なカギになる。告解は、聖なる誓約だから口外できないという神父。命より大切な誓約などないと神父を問い詰めるリンリー。なんでもかんでも神の御心にゆだねられるのは困りものです…。殺された父親は報いを受けたということだが、ロバータの母と姉がもっと早く対処していたら、 ロバータは苦しい決断をしなくともよかったのに…。
by mint-de | 2008-03-12 09:10 | 私の本棚

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