「夏時間の庭」

夏の光に輝く庭の花々や木々、フランスの田舎町を連想し、勝手に想像をふくらませて観に行った。
残念ながら、私が期待していたほど詩的な雰囲気はなく、親が遺した家や価値のある美術品を、どう処分するかといった話がメイン。その過程で、思い出って何なのだろうとか、歴史ある絵画や彫刻は美術館に展示されるのがベストなのだろうかとか、観終わったあとで考えてしまった。

画家だった叔父が遺した家に住んでいた母親が、亡くなった。長男は、母親から、自分が亡くなったら家も膨大な美術品も処分するようにいわれていたが、その場所に愛着があった長男は、妹と弟にそのまま残して使おうと提案する。しかし、妹も弟も、海外に暮らしているので滅多にこれないしお金も必要なので、処分したいという。長男は自分の考えに固執せず、二人の意見に従うので、もめることもなく、スムーズにことが運んでいって、逆にその淡々とした進み具合に、過去のなかに埋もれてはいられない寂しさを感じた。

お手伝いの女性が、価値のある花瓶に無造作に花を入れる。その花瓶が、後日、美術館に展示される。
使われる花瓶と、ただ置かれている花瓶。家も、モノも、使うからこそ、愛着がわく。
そして、それぞれの思い出になる。
誰かの心に残ったモノは、また誰かの記憶に生きつづけるのかもしれない。
by mint-de | 2009-05-21 15:28 | シネマ(た~ほ)