碧草の風

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「扉をたたく人」

「扉をたたく人」 (2007年 アメリカ映画 監督トム・マッカーシー)

コネティカットに住む大学教授のウォルターは、妻を亡くしてからは、淡々と仕事をこなし孤独な日々を送っている。あるとき、学会でニューヨークにでかけたウォルターは、自分の別宅であるアパートに、見知らぬ人間が住んでいて驚く。
若いシリア人のタレクと恋人のセネガル人ゼイナブ。
二人は、騙されてそこを「借りて」いたのだという。
慌ててでていく二人を見送ったウォルターだったが、行くあてのない二人に同情して、しばらく一緒に住むことにする。

タレクは、ジャンベ(アフリカン・ドラム)奏者。ジャンベの素朴で力強い音色に興味を持ち始めるウォルター。
タレクはウォルターに、ジャンベのたたき方を教える。戸惑いがちに、心を開いていくウォルター。
ぎこちなかった三人の関係が深まった頃、突然、ある出来事が襲う。
タレクは地下鉄の改札バーを飛び越えただけで、逮捕されてしまったのだ。
そして、ウォルターは、そのときはじめて、タレクもゼイナブも不法滞在者だったことを知る。
自分のせいで逮捕されてしまっタレクを何とか救おうと、入管の拘置所に面会にいって、タレクを励ますウォルター。その後、息子を心配したタレクの母モーナが、ウォルターを訪ねてくる。
次第に惹かれあうウォルターとモーナ。ウォルターはモーナに、今までは仕事をするフリをしていただけ、これからはタレクのために何とかしたいと話すのだったが…。

アメリカの移民対策は、9・11以後厳しくなったという。タレクがイスラム圏の人間ではなかったら、逮捕されることはなかったかもしれない。移民が築き上げた国は、今では移民を選別する国になってしまった。拘置所の対応に憤ったウォルターが、こんな扱いが許されるのかと怒るシーンが印象的だ。
モーナは、難民の申請を途中でやめてしまったことを悔やんでいたが、その国にいたいと思っても許されない人々は、一体どこへ行けばいいのだろう。
法の下では情は通用しない。でも、人間から情をとってしまったら、一体何が残るだろう。

ウォルターは一人で、地下鉄の構内でジャンベをたたくようになる。
構内に響く音色は、やってくる車両の轟音にかき消される。
まるで、巨大な権力はすべてを奪えるとでもいうように。
それでもウォルターは、ジャンベをたたき続けるのだった。

タレクのお陰で心を開くようになったウォルターだが、こんな経験をしたら、さらに孤独が深まるような気もする。
でも、ジャンベをたたくことで気持ちは癒やされるのだろう。自らの手で演奏することによって、また生きることにかすかな喜びのような感情がわいてきたのかもしれない。
by mint-de | 2009-07-01 16:23 | シネマ(た~ほ) | Trackback
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