2017年 10月 30日 ( 1 )

『羊飼いの暮らし』

『羊飼いの暮らし』 (ジェイムズ・リーバンクス 濱野大道訳 早川書房)

羊飼いの仕事に興味があるわけではないけれど、「イギリス湖水地方の四季」というサブタイトルにひかれて読んでみた。
著者の羊飼いという仕事への情熱と誇り、生まれ育った土地への愛着、そういった事柄が生き生きと描かれていて、読後はさわやかな思いに包まれる。
600年も続く牧畜を生業とした家の長男として生まれた著者は、幼いころから祖父や父の仕事を見てきた。羊飼いとして生きていくことに迷いはなかったけれど、父と衝突したことから、一時は家を離れオックスフォード大学で学ぶ。
卒業後は、ひたすら家業に励むけれど、やはり羊を育てるだけでは経済的に無理がある。そこで、ユネスコの仕事を手伝ったりしているという。
厳しい冬、羊たちの出産ラッシュ、穏やかな春、四季折々の自然の美しさ。
自然と動物が相手の仕事は、様々な困難が伴う。それでも、先人たちの知恵や周囲の協力で乗り越えていく。
大変な仕事だとは思うけれど、効率とか便利さとは無縁の世界に、私はちょっぴり憧れてしまう。

永遠の時が広がる山は、人間にぞくぞくするような喜びを与えてくれる。私がとりわけ好きなのは、自分よりも大きな何かに包まれているという感覚だ。自分以外の手や眼を通して、時間の深さに遡っていく感覚だ。山で働くことは、山を征服することではない。山は人を謙虚にさせ、人間の尊大さや勘ちがいを一瞬のうちに根こそぎにする。」(本文から)
by mint-de | 2017-10-30 16:11 | 私の本棚 | Trackback

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