碧草の風

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カテゴリ:シネマ(た~ほ)( 31 )

「天上草原」

「天上草原」  (2002年 中国映画)

「心洗われる」という表現があるが、この映画はまさに心洗われる映画だった。
モンゴルの雄大な大草原をバックに、それぞれの心の再生が詩情豊かに描かれる。
家族のつながりや動物とのかかわりを通して、生きていく上で大切なこと、命の尊さを静かにうたいあげている。

漢族の少年フーズ(虎子)は、母に捨てられてから失語症になった。
刑務所にいる父からフーズの世話を頼まれた、モンゴル族のシェリガンは、出所してからフーズを連れて、故郷へ帰る。
そうしてフーズは、内モンゴルの広大な草原にひっそりと立つ、
シェリガンの別れた妻バルマの住むゲルにやってくる。そこには、シェリガンの弟テングリもいて、4人の新しい生活が始まる。

映画は大きくなったフーズが、草原で過ごした日々を回想するナレーションから始まる。
雄大でたくましい天に近い草原、天上草原で過ごしたなつかしい日々。

フーズは町で育ったので、草原での生活にはなじめない。何度も脱走する。でもすぐに連れ戻されて、シェリガンに「モンゴル結び」と呼ばれる縛り方で足を縛られてしまう。
それを可哀想だと、ほどいてしまうバルマ。彼女は包み込むような大きな愛情でフーズの世話をする。
そんな彼女とよりを戻したいシェリガンと、ほのかに彼女に想いを寄せるテングリ。
ほどけそうでほどけない「モンゴル結び」に似て、それぞれの思いが絡まりあう。

草原にすむ生き物たちとのかかわりも、興味深く描かれている。
草原で暮らす彼らにとって、羊はとても重要な栄養源。血まで無駄にせず、使いきるらしい。
だから、羊はどんどん殺される。でもほかの生き物たちの命は大事にする。
白鳥のタマゴをもってきてしまったフーズをバルマが叱るシーンは、命を大切に思う彼女の気持ちが伝わってくる。

ラストは感動的だった。シェリガンとバルマのフーズに対する愛情の深さに、涙を誘われる。
バルマが水(乳?)をまきながら駆けていくシーンは、親が子を思う一途さに溢れていて、それでいておおらかで優しい母性が象徴的に描かれたラストだった。

この映画の監督をしたサイフとマイリースはともに内モンゴル生まれの夫婦で、ほかに「蒼き狼 チンギス・ハーン」などがある。
by mint-de | 2007-09-25 14:56 | シネマ(た~ほ) | Trackback