碧草の風

mintmmks.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

カテゴリ:シネマ(あ~そ)( 54 )

ウソも方便? 「大いなる休暇」

「大いなる休暇」 (2003年 カナダ映画)

劇場公開時に観たいと思いつつ見逃してしまった映画。DVDでやっと観ることができた。久し振りに大笑いしながら観た、とっても面白い映画だった。ウソをつき続けるストーリーなのに、この温かさは何なのだろう。ウソからでた誠なんて言葉もあるが、ラストがとっても気に入った。

カナダ、ケベック州の小さな島サントマリ・ラモデルヌ島。人口はたったの125人。かつては漁業が盛んだったが、今では島民のほとんどが生活保護を受けている状況。そんな時、島にプラスチック工場の誘致話が持ち上がる。工場で働ければ、生活保護をもらわず、誇りを取り戻せる。島民たちは何とか工場を誘致したいと思うが、工場が来るには、医者がいることが条件。医者のいない島に、なんとか医者に来てもらおうと島民は一致団結する。しかし、ケベック中の医者に手紙を送るものの、なしのつぶて。だが、あることがきっかけで、医者が1か月やって来ることになる。

その医者クリストファーを島に定住させて、島の医者になってもらうべく、町長のジェルマンをはじめ、島民たちは、ウソで塗り固めた大芝居をはじめる。そのウソがとんでもなくて、クリストファーの電話を盗聴して、彼の一部始終を島民が知ってしまったり、ルールもわからないのにクリケット・チームがあるといってみたり、あの手この手で必死にクリストファーをその気にさせようとする。最初から事情を話して頼めばいいのにと思いながら見ていたけれど、ジェルマンは、本当のことをいったら断られるとわかっていたのだろう。ずっと無医村だったのだ。そんな島に定住しようとする医者なんているはずがない。でも、この島のよさがわかったなら、いてくれるはず。彼は、この島の魅力には自信があったのだ。島を愛して外にでていかない島民たち。彼らのために、誇りを取り戻すために、ジェルマンはウソをつき続ける。

しかし、ジェルマンは、あることで失意のクリストファーを前にして、自分の行為の間違いに気付いてしまう。やはり、人間同士の付き合いは、本音で語り合わなければならない。ラスト、全てを知ったクリストファーが「クリケットは、好きか?」と聞くと、「嫌いだ」と答えるジェルマン。その後のシーンがいい。ウソの世界でもクリストファーと島民たちの心は、しっかりつながっていたのだ。

この映画が楽しいのは、社会的な弱者である島民たちの思い通りにことが進んで、力のあるものが島民たちの調子に巻き込まれてしまう、その痛快さにあるのだと思う。(DVD)
by mint-de | 2007-09-25 15:27 | シネマ(あ~そ) | Trackback

触れ合いの原点 「キッチン・ストーリー」

「キッチン・ストーリー」  (2003年 ノルウェー・スウェーデン合作映画)

1950年代に、実際にスウェーデンで行われていた調査をヒントにした映画。
独身男性のキッチンでの行動を調査するという目的で、スウェーデンからやってきた調査員フォルケと、調査されるノルウェー人のイザック。
この二人が観察する側とされる側の立場から、徐々に交流を深めていくストーリーなのだが、とにかくユニークな映画だった。

ほとんどイザックの家が舞台。調査員は対象者と話をしてはいけないし、手伝ってもいけない。高い台にのって、ひたすら、キッチン内の動きを記録するだけ。

対象者として応募したものの、景品が本物の馬ではなく、人形の馬だったことから、最初は意地悪ばかりしていた初老のイザック。
しかし、パイプタバコの葉をきらしたときに、フォルケが葉をくれたことから、だんだん心を開いていくようになる。

二人が仲良くなっていく様子が、とても妙なのだが、何故か説得力があるのである。
いくら話をするなといっても、同じ場所にいては、無関心ではいられない。まして二人は、妻子もなく孤独な身の上。

イザックの誕生日にフォルケがバースデー・ケーキをプレゼントするシーンは、とても微笑ましい。ノルウェーとスウェーデンの違いがさりげなく挿入され、イザックの知り合いのグラントが、フォルケに嫉妬のような感情をもつのもおかしい。

特別盛り上がるようなエピソードもなく、実に淡々とした映画なのだが、人と人の触れ合いの原点を、教えてもらったような気がする映画だった。
by mint-de | 2007-09-25 15:18 | シネマ(あ~そ) | Trackback

先人の争いを背負って 「キングダム・オブ・ヘブン」

「キングダム・オブ・ヘブン」  (2005年 アメリカ映画)

戦うことの虚しさが伝わってくる映画だった。
舞台はおよそ千年前だが、今の話として十分に通じる映画だ。

キリスト教徒とイスラム教徒が、束の間、平和に共存していた時代のエルサレム。
父の遺志を継いで騎士になったバリアンの活躍を通して、正義とは何か、そして戦うことの意味が問われる。

寛容なエルサレム王ボードワン4世とサラセン王サラディン、その二人とは対照的な、強欲で狂信的なボードワン4世の後継者や十字軍の戦士たち、それぞれの思惑がぶつかりあって、結局十字軍とサラセンの戦いが始まってしまう。

戦闘シーンを美しいというと、誤解を招くかもしれないけれど、かなり映像美を感じさせる作り方だった。
そして、戦いのバックに流れる重い音楽が、悲しさ、虚しさを象徴的に表現していると思う。
全体的に抑制された雰囲気の映画だった。

一番の魅力は、バリアンの人間性だろう。「命令はされても、決めるのは自分の魂だ」「戦いは人民の命を守るため」といったセリフなど、正義感あふれる、気高い騎士そのものの人物だ。ただ、鍛冶屋からあれほどまでの騎士になれるのだろうかという疑問はあるけれど。

そのバリアンをオーランド・ブルームが見事に演じている。正直にいうと、彼にはあまり期待していなかったが、陰影に富み、渋さまで感じてしまう演技は、なかなかよかった。

ほかにも印象的な言葉があるが、バリアンの「先人の争いを背負っている」というセリフは、今の時代の国々にも当てはまる言葉だ。
こういう映画を見ると、神を信じることによって争いが起きるのか、争いの材料として神を持ち出すのか、そういうことを考えてしまう。
by mint-de | 2007-09-25 15:02 | シネマ(あ~そ) | Trackback

「孤独がたった一人の友だち」

「オペラ座の怪人」  (2004年 アメリカ・イギリス映画)

私はミュージカルにはあまり興味がない。それでもこの映画は、ドラマチックな音楽と華やかさに惹かれて、見てきた。
映画の醍醐味を思う存分味わえる、これこそ映画の魅力といえる作品だった。
さすがロングヒットを続けている、舞台ミュージカルをもとにした映画だと思う。

1870年代、パリ・オペラ座では仮面の怪人ファントムの仕業と思われる事件が頻発していた。
そのファントムに歌唱指導されていたクリスティーヌは、代役で主役に抜擢される。
そして、幼馴染の貴族ラウルと再会したクリスティーヌは、彼と恋仲になる。嫉妬に燃えるファントムはさらなる行動にでるのだが…。

とにかく衣装・美術がすばらしい。あの冒頭のモノクロからカラーに客席が変わっていくシーンと、シャンデリアが落下するシーンは見事だった。
あのシャンデリアは3つ作られ、製作には4か月もかかったそうだ。

華やかな舞台と暗くミステリアスな舞台裏、幻想的な地下のシーン。
ファントム役のジェラルド・バトラーはとてもセクシーでカッコよかったし、クリスティーヌ役のエミー・ロッサムは清楚で可憐なイメージそのものの歌声だった。
ただジェラルドはセリフの声はハリのあるいい声なのに、歌のほうはちょっとイメージと違っていて、甘い感じがした。
でも、その点は彼のカッコよさに免じて目をつぶりたい(笑)。

孤独に生きてきたファントムが愛した、たった一人の女性クリスティーヌ。
ファントムは罪深い人間だけれど、ああいう風に情熱的に愛されると、女性の心も変わってしまう。

以前テレビでサスペンス仕立ての映画を見たときは、ファントムがとても謎めいていて、全体に暗い雰囲気だったので、この映画の華やかさにびっくり。
同じ原作をもとにしたものでも、切り口によってこんなに変わってしまうものなのだ。

アンドリュー・ロイド=ウェバーは、原作の愛に貫かれた部分に焦点をあてて、このミュージカルを書いたそうだが、その才能は凄いと思う。(2005年3月記)
by mint-de | 2007-09-25 14:53 | シネマ(あ~そ) | Trackback