カテゴリ:詩と言葉から( 37 )

しなやかな精神

「本当の幸福はどこに」  加賀乙彦  (2010年2月6日付朝日新聞夕刊から)

幸福というのは定義できないものだと思います。何を幸せと感じ、不幸と感じるかは、人により、状況によって異なる。「こうでなければ幸せになれない」という思い込みは捨てるべきです。
日本人は、江戸時代以来、集団の和を壊すことを恐れ、自分が他人にどう見られているかを常に気にしながら生きてきました。その傾向は強く残っている。「KY」という言葉の流行も、そうした状況を表しています。

人の目を過剰に意識することは、自分の評価を他人に委ねてしまうことにつながる。そして、そういう人ほど、ちょっとしたことで傷つきやすいのです。ピンチに陥った時、「他人がどう思おうと自分は自分だ」と思えるかどうか。そのためには、本当の意味での「個」を育てておく必要がある。そして、このような「個」は、自分の頭で考え抜き、他人と意見をぶつけ合いながら、人間関係を培っていくなかでしか、育ち得ないのです。
<略>

自分を不幸と決めつけず、身の回りにある小さな幸せに目を向けていくこと。挫折も幸福になるための要件だと考えること。しなやかな精神にこそ、幸福の源泉はあるのだと思います。

by mint-de | 2010-02-07 19:31 | 詩と言葉から

八木重吉の詩から⑥  「秋の かなしみ」 

わがこころ
そこの そこより
わらいたき
あきの かなしみ

あきくれば
かなしみの
みなも おかしく
かくも なやまし

みみと めと
はなと くち
いちめんに
くすぐる 
あきの かなしみ

 

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by mint-de | 2009-10-03 19:29 | 詩と言葉から

「考える言葉」

生活というものは、言葉なのだ。生活は、わたしたちが日常にもつ生きた「考える言葉」でできている。生活の奥行きを深くするのが、「考える言葉」だ。
誰もが胸のうちに、それぞれにじぶんの辞書をもっている。そうして、そのじぶんの辞書に、じぶんの経験や知識や記憶をとおして、じぶんにとって必要な言葉を、日常の「考える言葉」として書き込んでゆく。
ひとの人生のゆたかさは、じぶんの胸のうちにある辞書に、生きた「考える言葉」をどれだけゆたかにもっているか、だ。

           (長田弘 『小道の収集』 講談社・「ふりだしに戻る」から)


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by mint-de | 2009-09-11 14:10 | 詩と言葉から

心の目


花火に行っても
心の中で色とりどりの花火が開く
母のおかげで
何でも心の目で見られるようになった
不自由ではありません



アメリカのピアノコンクールで優勝した、全盲の辻井伸行さんの言葉(今日の朝日新聞の朝刊から)。
辻井さんのお母様は、伸行さんが、音楽以外のものにも触れて感性豊かな人間に育ってほしいと願い、美術館にも連れていき、色や形を伝えたという。
伸行さんは、母親から教えられた目にしたことのないものを、どんな風に想像したのだろう。
ピアノ曲も点字楽譜を使わず、耳で聴いて音を記憶するという。
彼の心の目は、想像力にあふれた豊かで深い色合いをしているのだろう。

「心の目」、とてもいい言葉だ。
いろんなものを見すぎた私のような者には、「心の目」も「ただの目」も、映るものは同じだけれど、たまには、自分の「心の目」を想像してみたいな。


ランタナが咲き始めた。この花の色を見ていると、
梅雨の鬱陶しい気分も薄らいでいく。

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by mint-de | 2009-06-11 14:09 | 詩と言葉から

河野義行さんの言葉

昨日(3月10日)の毎日新聞夕刊「特集ワイド」に、オウム事件の被害者河野義行さんの記事が載っていた。「人は間違うもの」だと語る河野さんの言葉に、胸を打たれた。
被害者でありながら容疑者扱いされ、被害を受けた妻は、14年間意識が戻ることなく昨年亡くなった。それでも、加害者側の人間と交流が生まれ、今では友だちのような感じになっているという。やってしまったことはしょうがないこととして、加害者を許せる河野さんの心の広さに、すごい人だなあと思う。
辛い目にあいながら、それでも、次のように考えることができる河野さんの、寛容な精神に敬服する。

河野義行さんの言葉から(3月10日付 毎日新聞夕刊)

「何度も死にそうな目に遭うとね、命には限りがあって、どこで終わるかわからない、人生八十いくつまでというのは錯覚だと分かる。3年後に人生が終わるとして、3年間恨んで恨んで過ごしていたとしたら、そういう人生はその人にとって幸せなのかなと思うわけです。楽しんでなんぼの人生の方がいいじゃないですか。だって、人は間違えるものなんですから」

「私は妻を選び、妻は私を選んだわけだから、お互いに守っていくというのは大事な義務だと思っているんです。妻がいることで、逆に自分が励まされてきた。ですから、大変だと思ったことないんですよね」

「命があるというのはやっぱり貴いということ。妻は14年間、話すことは全くできなかったし、動くこともできなかった。それでも家族を大きな力で支えてくれた。人が生きるということは、そこに命があるということ。命は本当に大事なのよということを訴えています」

「人は間違うものなんです。だから、それぞれが自分の中で自分の人生を総括するしかないんですよ。残り何年かわからないけど、ワクワクドクドキ、楽しい人生がいいじゃないですか」

by mint-de | 2009-03-11 13:49 | 詩と言葉から

八木重吉の詩から⑤ 「故郷」


心のくらい日に 

ふるさとは 

祭のように 

あかるんでおもわれる





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by mint-de | 2008-10-23 11:45 | 詩と言葉から

本当の出会い

<略>
本当は、どこに行っても、見る目さえあれば、世界は豊かな驚きに満ちているはずだ。隣近所の風景でも、親しい人たちの中にでも、見出そうと思えば、普段は見えない様々な面が多く見えてくる。ただ、多くの場合、そうした出会いを素晴らしいものにする、当人の実力が伴わないというだけである。
<略>
ただ、素晴らしい出会いとは如何なるものかと問われれば、正解は見つからない。そうした問いは、本来、他人が教えられるものではない。自分にとってどうか、という事がない限り、所詮は、社会的な評価に過ぎないからである。
<略>
本当の出会いには、本気と覚悟が必要だ。しかし、それを持つこともまた極めて難しい。


   (西江雅之 朝日新聞2008年9月2日付朝刊 「本気と覚悟を持って」から)


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by mint-de | 2008-09-02 14:58 | 詩と言葉から

最近の言葉から

どこかの県では、学校の先生になるには、採用担当者にお金を渡さなければならなかったらしい。
子どもに範を示すべき先生の汚職事件に、驚き呆れてしまう。
産地偽装も次から次とでてくるし、嘘と不正がまかり通る世の中。
ウンザリする日々に、心を洗われる言葉に出合う。

7月10日付朝日新聞朝刊・「ひと」欄に掲載されていた、
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)リラ事務所長・高嶋由美子さんの言葉。
高嶋さんは、ウガンダの避難民80万人の帰還に尽力したそうだ。 

「人々が希望を抱いて帰っていく姿を見るのが好きなのです」


7月6日付朝日新聞朝刊・「be」Televisionの記事から。
新しいドラマで刑事を演じる俳優の内野聖陽さんは、役柄を知るためにいろんな職業の人から体験談を聞いているそうだ。役者としての自分に、何ができるかを考えている。

「フィクションを作るのがおれたちの仕事なら、それを見てくれる人の人生に良きものを残したい」
by mint-de | 2008-07-11 21:43 | 詩と言葉から

八木重吉の詩から④ 「はらへたまってゆく かなしみ」


かなしみは しずかに たまってくる
しみじみと そして なみなみと
たまりにたまってくる わたしのかなしみは
ひそかに だがつよく 透きとおってゆく

こうして わたしは 痴人のごとく
さいげんもなく かなしみを たべている
いずくへとても ゆくところもないゆえ
のこりなく かなしみは はらへたまってゆく


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by mint-de | 2008-05-28 16:06 | 詩と言葉から

ふだんもっとも会えない誰か

独りで旅をするときは、ひとは、ふだんもっとも会えない誰かに会いにゆくのだ。

ふだんもっとも会えない誰かというのは、じぶんだ。

雨あがりの、冬の薄暮の、人影のない砂丘でわたしが会ったのは、

水平線の高い冬の日本海を見ていたもう一人のわたしだった。

  (長田弘 『人生の特別な一瞬』 晶文社・「冬の砂丘」から)



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by mint-de | 2008-04-13 07:08 | 詩と言葉から

見たり聞いたり、日々思うことをあれこれと…


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