カテゴリ:詩と言葉から( 37 )

孤独


強いというのは

存在の孤独を

本能的に

知っているということである。

  「私」と「あなた」は

互いに他者であって

決して同一ではないということに

    耐えうるということである。


  (高橋たか子 「私のヨーロッパ体験」から)



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by mint-de | 2007-09-22 15:11 | 詩と言葉から

努力と解決

確かにいくら努力しても報われないとか、不運としか言いようがないとか、そのような人が居られることは事実で、まったくお気の毒なことである。
あるいは、努力しても努力しても解決の緒さえ見つからぬときもある。
しかし、翻って考えてみると、「努力すればうまくゆく」などということが本当に正しいのか、なぜそうなのかわからなくなってくる。
私は来談される沢山の人たちのお話を聴いていて、人間が自分の努力によって、何でも解決できると考える方がおかしいのではないか、と思いはじめた。


(河合隼雄 『こころの処方箋』 新潮文庫) 以下、青文字は本書から。

河合先生は、上のような考えを抱いていたときに、この「ものごとは努力によって解決しない」という言葉に出合ったそうである。
これは、インド生まれの宗教家・哲学者のクリシュナムルチの言葉だそうだ。

さらに、河合先生はこう続ける。

子どものためにできる限りの努力をした、などという人に会うと、この人は、解決するはずのない努力をし続けることによって、何かの免罪符にしているのではないか、と思わされることがある。
それは、何の努力もしないで、ただそこにいる、ということが恐ろしいばかりに、努力のなかに逃げこんでいるのではないか、と感じられるのである。
努力などせずに、子どものために父として母として、そこにいること、これは凄く難しいことだ。


この言葉は、親として肝に銘じたい言葉である。でも、どうしていいかわからないときは、解決策を見出そうとあがくのが普通です。じゃあ、どうしたらいいの? 
先生は、こうおっしゃっている。

解決などというのは、しょせん、あちらから来るものだから、そんなことを「目標」にせずに、せいぜい努力でもさせて頂くというのがいいようである。
by mint-de | 2007-09-22 15:09 | 詩と言葉から

ひっそりとした幸福

悲しみのあとで  (ウンベルト・サバ 須賀敦子訳)
 
このパンには思い出の味がある、
港のどこより廃れて混みあった辺りの、
貧しい居酒屋で食べるこのパンには。

ビールの苦さがうれしい、
帰りがけに立ち寄って、
雲のかかった山々と灯台をまえにすわると。

苦悩にうちかったぼくのたましいは、
あたらしい目で、むかしの夕暮を眺め、
妊娠した妻といっしょに水先案内人など見ている。

それから、古びた木の部分が太陽に
ちかちかする、二本のマストとおなじくらい
背の高い煙突をつけた、船を。まるで、

二十年まえ、子供のときに描いた絵みたいな。
そのころ、手に入れるとは考えてもみなかった、
こんなうつくしい、甘い苦痛に満ちた人生、

こんなに、ひっそりとした幸福。



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by mint-de | 2007-09-22 15:03 | 詩と言葉から

心の湖

かなり前の朝日新聞「天声人語」に載っていた社会学者の見田宗介さんの言葉。
とても素敵な文章だ。自分の「湖」を深いものにできたらいいな。


「人はだれでも自分の中に湖をもっていて、その深さとか色調とか涼しさとか透明度とかを、その人の生の最後の瞬間まで、加えたり変幻したりしている。人に話をするということは、その人の中の湖に話をすることであるように思う。」 (見田宗介)


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by mint-de | 2007-09-22 14:59 | 詩と言葉から

海への郷愁

  
   (ジャン・コクトー 堀口大学訳)


  
   私の耳は貝のから


      海の響きをなつかしむ


 
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by mint-de | 2007-09-22 14:47 | 詩と言葉から

記憶を耕す

 
「記憶」について、とても気に入った表現がある。

「記憶は、過去のものでない。それは、すでに過ぎ去ったもののことでなく、むしろ過ぎ去らなかったもののことだ。とどまるのが記憶であり、じぶんのうちに確かにとどまって、じぶんの現在の土壌となってきたものは、記憶だ。
記憶という土の中に種子を播いて、季節のなかで手をかけてそだてることができなければ、ことばは、なかなか実らない。じぶんの記憶をよく耕すこと。その記憶の庭にそだってゆくものが、人生とよばれるものなのだと思う。」


  (長田 弘 『記憶のつくり方』 晶文社)
  
by mint-de | 2007-09-22 14:37 | 詩と言葉から

一番好きな詩

          (リルケ 富士川英郎訳)

  木の葉が 落ちる 落ちる
   遠くからのように
  大空の遠い園生が 枯れたように
  木の葉は
   否定の身ぶりで落ちる

  そして 夜々には
   重たい 地球が
  あらゆる 星の群から
   寂寥の中へ 落ちる

  われわれは
  みんな 落ちる
  この手も 落ちる
  ほかをごらん 
   落下は すべてに あるのだ

  けれども ただひとり
   この落下を
  限りなく やさしく
   その両手に
  支えている ものがある

    
by mint-de | 2007-09-22 14:26 | 詩と言葉から

見たり聞いたり、日々思うことをあれこれと…


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