碧草の風

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ヘニング・マンケル

AXNミステリーの「刑事ヴァランダー 2」の一挙放送で、原作者のヘニング・マンケルのインタビューを見た。
マンケル氏の経歴は、ヴァランダー・シリーズではない『タンゴスステップ』のあとがきに詳しく載っていて、大体のことは知っていたけれど、彼が小さいころに家を出た母親には15歳になってから会ったという話には少し驚いた。
マンケル氏はずっと、母親がどんな人か自分なりに想像していて、自分のなかに母親像が出来上がっていた。ところが実際に会った母親は、自分が想像していた人とは違っていて、母親には失礼ながら想像上の母親のほうが良かったと思ったという。自分がイメージした母親像があったから、母親がいなくとも(父親との関係が良好だったこともあり)やってこられたので、想像する力の大切さに気づいたという。そして7、8歳のころに読んだ『老人と海』に感動したこともあり、物語の世界に憧れ作家を志したのだそう。
8歳で『老人と海』に感動できるマンケル少年というのもすごいが、母親を冷静に見られるその目もすごいね。もっとも母親の気持ちになってみると、ちょっと悲しい発言ではある。
アフリカのエイズ患者の救済活動など、作家として得たお金を慈善活動に役立てている姿は、とても立派だと思う。シンプルに生きたいというマンケルさん。ヴァランダー・シリーズは9冊しかないが、これからも共感できる「私たちの物語」を書いてほしいと思う。
by mint-de | 2013-01-28 14:59 | 海外ドラマ(北欧)

『背後の足音』

『背後の足音』   (ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 東京創元社)

クルト・ヴァランダー・シリーズの7作目。
糖尿病になってしまったのに、同僚たちには、ちょっと血糖値が高いだけだとごまかすヴァランダーさん。
そんなに病気を認めたくないなら、もう少し食生活を改善すればいいのにと思うけれど、ハンバーガーやピザばかり食べていて、読んでいるこちらが気持ち悪くなってきた(^^;)

今回は、「扮装」が一つのテーマ。普段の自分ではない誰かに変装することで、人としてのバランスをとる人たち。ヴァランダーには理解できないことだけれど、人は別の誰かにならなくとも、素のままでも、他人を理解することは難しいのではないだろうか。
ヴァランダーの同僚が殺された。その同僚のことを調べているうち、ヴァランダーは、仕事をずっと一緒にやってきたのに、彼の私生活を知らなかったことに気づく。
自分はどれだけ同僚のことを理解していたのだろう?
その同僚は他の者に、ヴァランダーのことを親しい友だといっていたと聞き、驚くヴァランダー。
同僚の死後、扮装した若者たちが遺体で見つかる。二つの事件には関連性があった。しかし、なかなか犯人につながるものが見つからない。焦るヴァランダー。その上、やたらのどがかわき体の調子が悪い。
病気なのに大変だなあと思いながら読んでいたので、エピローグでほっとした(^^)
ヴァランダーが嘆くように、事件を起こした犯人の動機は不可解だ。
この間のノルウェーの事件のように、何の咎もない人間を無差別に殺す理由が、そこまでする理由が理解できない事件が多い。
こんな時代に、ヴァランダーのような刑事は、やりきれない思いを抱きながら捜査するのだろうなと、その仕事の大変さを思った。
by mint-de | 2011-07-30 11:11 | 私の本棚 | Trackback

『五番目の女』

『五番目の女』 (ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 創元推理文庫)

クルト・ヴァランダー・シリーズの六作目。
父親と一緒にローマを旅してきたヴァランダーは、その思い出にひたる間もなく、残忍な方法で殺害された男たちの事件を捜査することに。
進展しない捜査、突然の父の死。
雨ばかり降る秋のイースタは、ヴァランダーの心を日増しに重くしていた。

連続殺人を解決できない警察に不満をもった市民たちのなかからは、自警団までできてしまう。
同僚の刑事の娘は、自警団に影響された生徒たちに襲われてしまい、ヴァランダーは暴力に支配される社会を嘆く。
読者は犯人を最初に知らされているので、犯人の詳細や動機はわからないけれど、ヴァランダーたちの捜査が、早く犯人にたどりつかないかとやきもきしながら読み進めることになる。
著者のマンケルさんは、本当にうまい作家だなあと思う。読み始めると、後を引くお菓子のようにやめられなくなるのだ(^^)

ヴァランダーたちの地道な捜査、同僚たちの暮らしぶりやチームワーク、時折恋人のバイバに思いをはせるヴァランダーの姿には、ホームドラマのような味わいがある。
犯人には、母親のことを思うと同情の余地がないわけではないが、彼女がそこまでする動機にはちょっと違和感が残った。

訳者の方のあとがきを読んで驚いたのだが、マンケルさんは今年の5月、イスラエル軍に攻撃されたパレスチナへの救援物資運搬船に乗っていたという。有名な作家でありながら行動する作家でもあるようだ。こういう経験が、作品へのエネルギーになっているのかもしれない。
by mint-de | 2010-09-13 15:00 | 私の本棚 | Trackback

「スウェーデン警察 クルト・ヴァランダー」 第4・5話

「笑う男」

今回は、公私共に窮地に陥るヴァランダーを描く。
娼婦とは知らずに関係をもち、お金を払えといわれて、冗談じゃない警察だといってしまうヴァランダーの対応は、一応正しいと思う。ここでお金を払ってしまうと買春になるわけで。その娼婦が、あとで被害者の重要な証人になってしまうので、ヴァランダーにとっては運が悪かったということ。
でも彼女の話によって、事件の真相がわかったし、彼女が買春の訴えを取り下げてくれたので、命拾いしたヴァランダー。でも、恋人のマヤとは別れることに。
ヴァランダーにピッタリの女性はなかなか現れないようだけれど、いい年をした男が恋人のことでグチャグチャ悩む姿はあまり見たくはないな。

ヴァランダーの友人ステーンの父グスタブが、交通事故死した。
親子で弁護士をしていたが、ステーンは、父の死に疑問があるのでヴァランダーに調べてほしいと頼む。
しかし、そのステーンも何者かに殺されてしまう。ステーンの通話記録からお相手をしていた娼婦たちに事情を聞くことになったが、その中の一人が、ヴァランダーと関係をもった娼婦だった。
彼女に見つからないように隠れまくるヴァランダーがおかしい。しかし、彼女に見つかってしまい、買春疑惑で、署内はもちろん新聞ネタにまでなってしまう。
マヤにはそっぽをむかれ、車は爆破され、怪我で入院していたら襲撃までされて踏んだり蹴ったり。

ヴァランダーの捜査で、弁護士の親子が殺された事件は、スコーネ一の実業家が関わっていたことがわかる。アルフレッドと娘のクリスティーナは、臓器移植の需要と供給のための事業と称し、ブラジルの貧困層の人間から臓器を奪い死人までだしていた。ステーンは、父がその事業に関わっていることをやめさせ、ヴァランダーに全てを話そうとして殺されたのだ。
ヴァランダーは真相を突き止め、アルフレッドの家宅捜索に向かう。しかし、途中で中止の命令がくだってしまう。相手の存在が大きすぎて、警察はそれ以上踏み込めなかったらしい。
諦めきれないヴァランダーは、記者にいい仕事をしろといって、事件のファイルを渡す。
逮捕できなくとも、そのうちアルフレッドの評判は地に墜ちるだろう…。
悪いことをしたとわかっていても、逮捕できないなんて、悔しいね。
by mint-de | 2009-09-15 16:13 | 海外ドラマ(北欧) | Trackback

「スウェーデン警察 クルト・ヴァランダー」 第3話

「リガの犬たち」

今回は、ラトビアが舞台。海で見つかった救命ボートには、二人の男の死体があった。
ポケットから見つかった領収書はリガの店のもの。その後、リガからリエパという捜査官がやってくる。
イースタ署員やヴァランダーは、実に友好的な態度でリエパと接する。ヴァランダーが、リエパの奥さんに赤いコートをプレゼントしたのには驚いた。
リエパが帰国してから、事態が急変する。リエパが殺されたのだ。ヴァランダーはリガへ飛ぶ。
しかし、リガの警察はヴァランダーに捜査への協力を頼みながら、ヴァランダーに尾行をつけたりホテルの部屋に盗聴器をしかけたり、イースタとは正反対の対応。
この原作は、ラトビアがまだソ連の支配下にあって、独立運動のさなかに書かれたものらしい。
そういう背景があるので、ヴァランダーの捜査もなかなか思うようにいかない。
結局、事件を解決に導いたのは、リエパの妻バイバへのヴァランダーの恋心だったといえる。
一度はリガから帰国したのに、バイバの頼みを聞き入れ、偽名を使っての危険な再入国。
そして、警察内部の犯人を突き止めることができた。

それにしても、ヴァランダーって、すぐに女性を好きになる人みたい。心臓発作をおこし、弱気になってエヴァにプロポーズしたら、あっさりフラれ、その後知ったバイバに、すぐに気持ちが動いたのだから、誰かを想っていないとダメなタイプらしい。
by mint-de | 2009-09-04 16:05 | 海外ドラマ(北欧) | Trackback

「スウェーデン警察 クルト・ヴァランダー」 第1・2話

「殺人者の顔」

ヴァランダー役の俳優さんが、私が原作を読んでイメージした感じとはかなり違っていたけれど、ドラマとしては面白かった。
残忍な殺され方をした老夫婦の事件。
瀕死の妻の口からもたらされた「外国の」という言葉から、また別の殺人事件が発生してしまう。
スウェーデン国内の移民に対する問題や、人種への差別意識も浮き彫りになる。
原作のあとがきによるとスウェーデンは移民の多い国で、人口の五分の一が移民か外国生まれの人なのだそう。外国人の安い労働力によって、国内の人間が失業してしまうという話には、10年以上も前のことだけれど、日本にも通じるところがあって、どこの国も大変だなあと思う。
刑事の仕事はカンによることもあるといったヴァランダーが、実際に自分が銀行で両替したときのヒラメキで、事件を解決に導いたところが面白かった。地道な捜査も大切だけれど、推理力も必要。それも経験の積み重ねだろうけれど。
娘のリンダや父への心配には同情するし、離婚しても妻と会いたがったり、孤独を癒やすために性急に女性を求める気持ちが滑稽だったり、病気の同僚への気遣いなど、ヴァランダーの私生活には感情移入できる要素がいっぱい。
そして、あまり目にしたことのない北欧の風景が楽しめるのも魅力。
by mint-de | 2009-08-23 19:04 | 海外ドラマ(北欧) | Trackback

『目くらましの道』

『目くらましの道』 (ヘニング・マンケル 柳沢由実子訳 創元推理文庫)

スウェーデン人作家ヘニング・マンケルが描く、警部クルト・ヴァランダー・シリーズの5作目。シリーズの中では一番気に入った。

ヴァランダーは、スウェーデン南部の田舎町イースタ署の中年刑事だ。妻とは離婚し、離れて暮らす年老いた父を心配しながら、たまにやってくる娘の訪問を喜ぶ、ごく普通の父親でもある。福祉国家と呼ばれ、理想の国のイメージがあるスウェーデンでも、悲惨な事件は起こる。

今回のヴァランダーは、凄惨な死体を残す連続殺人犯を追いながら、畑で自分の目の前で焼身自殺した少女のことが、ずっと気になっている。そして、その殺人犯の事件と少女には接点があった。事件解決後のラスト、エピローグでは、その少女の父親が遠いドミニカからやってきたことに触れ、ヴァランダーの嘆きが語られる。

ヴァランダーは、この世界で起こる理解しがたい事件を目のあたりにして、いま生きている世界を理解することなど無理ではないかと心を痛める。暴力が不可欠な時代、不安な未来。出口のない暗闇を歩いているような気分のなかでも、生きてまた警官としての職務に誠実であろうとする。彼の痛みは、いまこの時代の痛みでもあると思う。読むのが楽しみなシリーズだ。
by mint-de | 2008-01-12 13:03 | 私の本棚 | Trackback