車窓からの眺め
2009年 12月 05日

障害者や病気で列車の旅ができない人に、見てもらいたいといっていた。
乗車すると、ひたすら窓の外を見ていて、決して眠らないという彼の情熱には驚いた。
私も、乗り物から眺める景色は好きだ。
自分が普段歩いている目線とは違う高さや速度で見る風景は、同じ風景でも、どこか違って見える。そして、一瞬のうちに通り過ぎる風景に、もう二度と見ることができない景色かもしれないと思うと、何か切なさのようなものさえ感じてしまう。
今年のイタリアの旅は、ほとんどバスで移動した。
バスの窓から見える風景は、日本と同じようで、どこか違う。
ただ眺めるだけでも、飽きることのない旅だった。
高速を走っているときに、赤や黄色のカラフルな車体のトラックをよく目にした。
イタリアはトラックまでオシャレ! 送電線をつなぐ鉄塔は、日本より細いように見えた。
畑がつづく田舎の風景は、日本と同じような景色。
観光地で、たまたま入ったスーパーでは、地元の人たちが買物をしていた。
その姿は日本とほとんど変わらない。人々の暮らしに、それほど違いはないのだ。
私は、その違いのなさに、ホッとした。懐かしい人々を、見たような気がした。
車窓から眺める景色は、自分が降りない場所。
見えているけれど、自分がいない場所。
人は、一生のうちに、どれだけ違う風景を見ることができるのだろう。

by mint-de
| 2009-12-05 16:29
| 記憶の鞄