「LOST」 35~37話

(2-10) 「詩篇23章」

エコーの過去もつらいものだった。弟を救うために人を殺したことで、望みもしなかった悪の道に入らざるを得なくなり、悪の道を生きていたエコー。しかし、あるとき、弟はエコーを救うためにした行為がもとで、命を失ってしまう。そして、その後は運命のいたずらで神父になったエコー。エコーが、神の言葉にすがるように生きてきた気持ちが理解できるエピだった。

フラッシュバックは、ナイジェリアで暮らすエコーの少年時代から始まる。
無邪気にサッカーに興じる少年たち。そこへ、銃を持った男たちを乗せた車がやってくる。
子どもをさらってギャング団の仲間にするつもりらしい。教会から、もう子どもをさらうのはやめてくれと叫びながら出てきた老人を、男の一人がなぐり、エコーの弟イェミに銃を持たせ、その老人を撃てと命じる。エコーは躊躇しているイェミから銃を取り、その老人を撃ってしまう。弟のために。
そうして、エコーは男たちの車に乗せられ、悪の道で生きていくことになった。天性の殺し屋と称されるまでになっていたらしい。昔はものすごく怖い人だったのね。

あるときエコーは、大量の麻薬を手にする。国内で売るには量が多すぎてさばき切れないので、飛行機で国外に持ち出したいが、ナイジェリアの民間機で飛行が許されているのは、国連と教会関係者だけ。エコーの弟が神父だと知って、エコーに買わせようとする売り手の魂胆を見抜いたエコーは、その麻薬を安く買う。そして、神父のイェミに飛行機を借りて、国外に持ち出そうとする。もちろん、イェミは断る。しかし、断ればエコーの仲間が教会を焼くだろうという言葉に、イェミは苦渋の決断をする。エコーたちを神父に任命した書類にサインをするが、お前も罪人だというエコーの言葉に、「神は僕を許す」と返すイェミ。

それで、エコーは、マリア像(チャーリーがもっていたあの像。これで、なぜ麻薬が入っていたかわかった)を300体買い、お金を払った。そのお金でワクチンを買えるらしい。麻薬を国外に出し、国内の子どもたちにワクチンを与えられるのだから、エコーなりの善の行いだったのかもしれない。

しかし、麻薬を積み込み、飛行機で発つ直前に、イェミが車でやってくる。「軍に通報した」と。イェミは真の善人だったのだ。エコーを悪の道から救うチャンスと考え、行くのを止めようとしたのだ。だが、イェミの考えたように、ことは進まなかった。やってきた軍の兵士の銃撃で、イェミは命を落とす。仲間の一人は、撃たれたイェミを機内に入れると、エコーを突き飛ばして扉を閉めてしまう。呆気にとられたエコーは、やがて、「神父様? ご無事で?」という兵士の声を聞くのだった。

仲間は、エコーのことを考えてしたのだろうか? あの麻薬のお金を独り占めできるから、突き飛ばしたのかと考えてしまうけれど、あとで、エコーは命の恩人といっているので、ここはちょっと疑問。

マイケルは、ウォルトと交信したいばかりに、ケイトと当番を代わる。
エコーは、銃の管理を万全にすべく金庫の鍵をチェックしたり、マイケルに銃の撃ち方を教えたりするが、今ウォルトを探しに行くのは賢明ではないと助言する。
ケイトはソーヤーの散髪を楽しそうにやっていて、ソーヤーのにやけ具合も微笑ましい。そこへ、ソーヤーに薬を渡すためにやってきたジャック。ジャックは、「なんともないさ~」って感じだったけれど、内心どうなんだろう?
ジンは、アナにサンを紹介する。微笑むアナ。アナは少しずつとけ込んでいけるかもしれない。

クレアに、聖書の言葉は、心の糧だと話すエコーは、クレアからマリア像の話を聞き、チャーリーに、飛行機の墜落現場まで案内するようにいう。エコーは全部お見通しなのに、麻薬中毒だと思われたくないチャ-リーは、のらりくらり。

途中で、エコーは、あの時、扉を閉めた神父姿の仲間の遺体を見つける。命の恩人だといって、祈りをささげるエコー。確かにこの飛行機にエコーも乗っていたら、今のエコーはないけれど、麻薬を独り占めしようとしていたら、そういえるだろうか? それとも、神父として生きてきたエコーの立場で考えると、彼は命の恩人と解釈できるということ?

その後、場所がわからなくなったチャーリーが木に登って周りを見ていると、あの黒い煙が襲ってくる。しかし、ひるまずに立ち続けるエコーの前に、その煙は退散。意外と小心だ!(笑) 
あのあたりに何かあって、防衛しているのだろうか?

エコーはやっと墜落現場で、弟の遺体を見つける。遺体を抱きしめて泣くエコー。子どものころにつけていた自分の十字架を弟の胸からとり、それを握りしめる。チャーリーの神父じゃないのかという問いに、エコーはやっと答える。
「私は神父だ」
そして、聖書の詩篇23章を唱える。エコーの魂を生き返らせてくれた主の言葉を。

クレアは、チャーリーが麻薬をやっていたと知り、怒り心頭の様子。チャーリーの荷物とチャーリーを追い出し、アーロンに近づくのを禁止する。

チャーリーは、ヤクをやめようと思っていたら、あのマリア像を全部捨ててもいいと思うけれど、そうできないところを見ると、ヤクを絶てるのはまだまだ先かもしれない。


(2-11) 「境界線」

今回、ほんのちょっとだけれど、アザーズの一部がわかった。ジャックたちは、アザーズに「許された」から、アナたちのように何人もの犠牲者をださずに済んだらしい。何を基準に「許された」のかは不明だが、銃を保持していることが、アザーズにとっては、脅威になったのかもしれない。私は、アザーズとダーマとは関連があるのかと思っていたが、ハッチの存在を知っていたら、武器庫をねらうはずだから、彼らは関係がなさそうだが、ウォルトのメッセージが、なぜハッチのコンピュータに流れるのかはナゾだ。

フラッシュバックはジャック。脊髄に腫瘍のある患者が、訪ねてくる。ジャック父子は、腫瘍の除去は困難だと判断するが、その患者と娘は、ジャックがサラの脊柱損傷を治したことを知っていて、ジャックに手術を願い出る。奇跡を信じたいといって。ジャックは、父ではなく、自分に依頼されたことが、嬉しい様子。頼りにされると、俄然張り切るタイプで、のめりこんでしまうようだ。その患者の娘も、最初から、ジャックを見つめる眼差しに、ほかの思いが込められているようで、あやしげだった(笑)。ジャックの努力もむなしく、手術は失敗する。落胆と悲しみの感情を抑えきれない娘は、ジャックにキスしてしまう。それを受けるジャック。父親から一線は越えるなといわれていたのに。

サラとの関係は冷え切ったものになっていたが、患者の娘とキスしてしまったと話したジャックの言葉に、サラは別れを切り出す。ジャックは仕事に一途な自分を反省して、もっと一緒にいる時間を持とうと思っていたのに…。「いつも直すものが必要なんだわ」 サラは、結婚してはじめて、ジャックがどういう人間かわかったのだ。サラのほかに誰かいるといういいわけは、ウソかもしれないと思う。これ以上傷つきたくなくて、そして、ジャックを責めたくなくて、そういったのかもしれない。

ハッチの中で目覚めたジャックは、ロックがいないことに気付く。倒れているロックに駆け寄ると、なんとマイケルが銃を向けている。マイケルは、自分一人で今すぐにウォルトを捜しにいくという。ジャックはいつか捜しにいくつもりだったとしても、マイケルには、いつかじゃダメだったのだ。いくらロックに銃を習ったといっても、一人で行くなんて…。

武器庫に閉じ込められたジャックとロックだったが、包帯交換にやってきたケイトとソーヤーに助けられる。すぐ、4人でマイケルの後を追うが、ジャックはケイトに残るようにいう。ケイトは不満。二人のやりとりを見ていたソーヤーが、ジャックに「何をされた」と聞いたのには、笑ってしまう。ソーヤーは、ケイトの行動がよくわかるらしい。でも、自分がケイトを愛しているといってしまったことは、もちろん覚えていない。

3人でマイケルを追うものの、結局迷ってしまう。マイケルに指図するほど偉くはないし、マイケルを説得する自信はないと思っているロックは、引き返そうとする。しかし、ここで引き返したら、二度とマイケルに会えなくなるし、後悔すると思っているジャックは、ロックを引き止める。そのとき、「そうだ、ジャック」という声がする。驚いたことに、イカダに乗っていたソーヤーを撃った男が、目の前に立っている。このおじさん、ひげがもじゃもじゃしていて、顔も汚くて、かなり動物的(笑)。

そして、この境界線を越えるなという。彼らが、何人いて、どのくらいこの島にいるのかはわからないが、ジャックたちと一緒に、島を出ることを考えようとしないところが、ものすごく不思議である。銃を置いて帰れという言葉にジャックは首を振るが、戻ったはずのケイトが、彼らに捕まっていた。ケイトの命と引き換えに、渋々銃を置く3人。

解放されたケイトは、ジャックに謝る。僕のほうこそ悪かったというジャック。ケイトも一緒に行動していたら、結果は変わっていただろうか? 自分を責めるなと、ケイトに珍しくまともなことをいうソーヤー。ジャックは、あそこでは境界線を越えなかったが、帰ってから、アナに軍隊を作れるかと聞いたところをみると、今後、境界線を越えるつもりかもしれない。アザーズと戦って、何が変わるのだろう? 島の外に出ることを考えた方がいいと思うけれど。

ジンは、マイケルとの友情より妻との愛情を選択し、お互い指図されるのは嫌だということがわかり、愛の再生が始まったよう。
ハーリーは、孤島の孤独感から、リビーを口説けるかもしれないと思い、チャーリーは、クレアのことが気にかかっている。
アナはビンセントとお友だちになれそうな気配だ。


(2-12) 「天使の言葉」

フラッシュバックはチャーリー。第1シーズンの第7話で、バンド活動をやめて、何故、兄のリアムがオーストラリアに行ったのかわからなかったが、やっと理由がわかった。バンドの活動中、リアムは薬物中毒でバンドのお荷物状態になっていた。それを曲づくりに励み、必死に支えていたのは、チャーリーだった。しかし、ある日、リアムは、妻が別れ話を切り出したときに、やっと自分のだらしなさに気付き、やり直す決意をしたのだ。チャーリーに無断で、ピアノを売り、そのお金で妻子とオーストラリアに行き、職に就くという。家族のために立ち直るという兄に、俺だって家族だと叫ぶチャーリー。弟のことをまったく考えていない兄の行動には驚くばかり。

それ以来、チャーリーは、クスリから縁を切れなくなったらしい。ロックの言葉を借りると、チャーリーが、クレア親子を自分の家族のように守ろうとするのは、自分自身を救うことができないので、何か、自分より弱い存在のものを救おうとすることで、気持ちのバランスをとっているということかもしれない。

チャーリーは夢を見ている。小さい頃に母親がピアノをプレゼントしてくれた。このピアノで楽をさせてねという母親。この夢がどこまで事実なのかはわからないが、母親は、チャーリーの才能が、家族に金銭的なゆとりを生むことを期待していたのかもしれない。しかし、父親は誰も救えないと怒鳴るだけ。ピアノから赤ちゃんの泣き声が聞こえてくる。木が異様に揺れる。そこで目覚めるチャーリー。

慌てて、アーロンの様子を見にいったチャーリーは、ビーチでアーロンを抱っこしたクレアがロックと仲良く話しているのを目撃する。嫉妬の眼差しを向けるチャーリー。チャーリーは、オムツを作ってクレアに渡しながら、ヘロインのことを黙っていたことを謝る。今すぐに仲直りしたいチャーリーに、クレアは距離を置かせてというだけ。自分が守ろうとしていたものを、急に取り上げられてしまったチャーリーは、何も救えなかった過去の自分を思い出したその焦りからか、それともやっていないといいながら、ヘロインを使ってしまったためなのか、奇妙な夢を見てしまう。多分、ヘロインを使ったのだと思う。そうじゃなければ、夢と現実を混同しないだろう。

アーロンを海から救ったあとで、夢からさめるチャーリー。チャーリーの腕の中のアーロンを見て、「真夜中に子守か」と不思議がるハーリー。その後ろから、いなくなったアーロンを探して、皆がやってくる。クレアは、アーロンをさらったチャーリーにビンタを一発。

チャーリーは、エコーに夢の話をする。アーロンに死が迫り、天使の姿をしたクレアが救えるのはチャーリーだけだといったことを。エコーがその話を鵜呑みにして、意味があると思ってしまったのは、神父としての自覚の強さからかもしれないが、ヘロインのことを思い出してほしかった気がする。自分が作り上げた「アーロンが危ない」説をもとに、チャーリーは、クレアにアーロンの洗礼をすすめる。その様子を見ていたロックは、マリア像のヘロインはすべてなくなったというチャーリーの言葉がウソだったことを見抜く。

チャーリーがマリア像の保管場所で像を割って、ヘロインを手にしたとき、ロックがやってくる。「理由がある」「赤ん坊が危ない」など、いろいろ弁解を並べるチャーリー。信じていたのに裏切られたロックは、自分が始末するといって、リュックに像を入れる。その後で、クレアに話しかけられたロックは、不安がるクレアに、夜は用心棒としての役割を引き受けようという。お礼をいうクレア。そして、チャーリーから聞いた洗礼の相談をする。ロックは、リュックの像を見ながら、危険などない、チャーリーは自分を救えないので、そういっているだけだという。ヘロインのせいだといわなかったのは、チャーリーへの思いやりだろう。

しかし、ロックに像を取り上げられたことと、クレアにもバレたかもしれないという気持ちからか、チャーリーは、森に火をつけ、皆が火事に気をとられているすきに、アーロンをさらってしまう。泣き声に気付いたクレアにすぐに見つかり、ロックからは、何度も殴られる。
今回のチャーリーの妄想には、ついていけない。勝手にクレアの家族気取りで、結果は自業自得。これからのチャーリーが心配だ。

そして、ロックは、何故ヘロインを捨てずに武器庫に隠したのか? 誰のために? 何のために?

ケイトはソーヤーのリハビリにつきあい、ハーリーはリビアと話す機会がでてきた。リビーは、ハーリーが慌てて飛行機に乗ったとき、足を踏んでいた彼女だった。ジャックは、アナの小屋を作る手伝いをして、アナもジャックには笑顔を見せる。ケイトとの関係にすぐに気付くアナ。これから三角関係になったりするのかな?

クレアはアーロンとともに、エコー神父の洗礼を受ける。「罪をきよめ、イエスを自由にした」、それが洗礼の本来の意味と知り、神に救いを求めることにしたのだろう。
by mint-de | 2007-09-21 11:42 | 海外ドラマ(LOST)