『チャイルド44』

『チャイルド44』 (トム・ロブ・スミス 田口俊樹訳 新潮文庫)

去年の秋に面白いと聞き購入したものの、冒頭のあるものを食べようとするシーンが
嫌で、そのままになっていた本。でも我慢して読み進めたら、本当に面白かった! 
何しろ、ソ連時代の1978~90年にかけて、一人の男が52人もの人間を殺害した事件にヒントを得て書かれたミステリなので、気持ち悪くなる個所もある。
それでも、読み始めると先が気になり、主人公がどんどん追い込まれいくハラハラドキドキの展開が面白かった。

1953年、スターリン体制下のモスクワで、国家保安省の捜査官として働くレオ。
国家に忠実だったレオは、あることがきっかけで、まったく逆の立場に置かれてしまう。
国のためなら、間違っていることでも正しいといわなければ、逮捕されてしまう時代。
特権を享受していたレオだったが、次第に、人間らしさを取り戻し、追いつめられながらも悪戦苦闘して、本当に人々のためになることをしようと行動するようになる。
後半はひたすら逃げまくる展開になり、アメリカ映画の不死身のヒーローばりの活躍をするレオに、ちょっと新鮮味は薄れてしまったけれど、ソ連時代を描いたミステリとして、英米のミステリとは違った味わいがあった。もっとも作者はイギリス人だけれど。

凶悪な殺人は、理想的なわが国家ソ連には有り得ないとして、徹底的な捜査がなされなかったために、12年も殺人者が野放しになっていたという。恐ろしい話である。
いまでも、ちょっと怖い国ではあるけれどね…

あのリドリー・スコット監督が、この小説の映画化権を獲得しているそうだ。
文庫で770ページものこの作品を、どんな映画に仕立てるのか、今から興味津々である。
by mint-de | 2009-02-06 15:08 | 私の本棚