カテゴリ:詩と言葉から( 39 )

「過去」は変えられない

朝日新聞8月31日付朝刊beの「悩みのるつぼ」の回答者は姜尚中さん。
相談者の悩みに答えている言葉の中で、「過去」について、とても印象的な言葉があった。
私も過去の出来事でいくつか「こうすればよかったのに」と悔やむことがある。
気分が落ち込むこともあったけれど、姜さんの言葉に慰められた気がする。


(前略)過去は神ですらも、否定することはできないと思い定めるのです。砂時計のたとえで言えば、未来という時間の砂は、現在というくびれを通って下に落ち、過去にならなければ、無に等しいものです。確実に存在し、誰も否定できないもの、神ですら変えられないもの、それは過去です。その過去についてあれこれと思案し、その評価をめぐって悩むことに何の意味があるのでしょうか。
過去はただ抱きしめ、プラスかマイナスかの評価の彼岸にあるものとして、あなたの人生、いやあなたという一人の人間の人格そのものになっているのです。神すら変えられないものに一喜一憂するなど、馬鹿げています。大切なことは、あなたが過去を抱きしめ、そしていま、この瞬間に人生があなたに問うものに答えていくことなのです。(後略)


  (姜尚中 朝日新聞8月31日付朝刊be「悩みのるつぼ」から) 
by mint-de | 2019-09-02 16:24 | 詩と言葉から

関野吉晴さんの言葉から


「語る」-人生の贈りもの- 地球永住計画 歩いて考える            
      関野 吉晴 (2019年7月12日 朝日新聞朝刊から)

2015年、「地球永住計画」を始めた
 「火星移住計画」はもはやSFの世界ではなくなりつつあります。しかし、火星移住のための調査研究で分かってきたことは、この地球が命を育むのにいかに奇跡的な星かということ。地球の生態系を良い状態で孫やひ孫の世代に繋ぐにはどうしたらいいかを考えるのが、地球永住計画です。
 東日本大震災が起きて、日本人が生産至上主義の路線から変わる転機になると思いましたが、変わらなかった。まずは足元にあった東京の玉川上水に着目しました。
 アマゾンに比べると小さな自然ですが、草木が繁茂し、虫や鳥が飛び、動物たちが動き回っている。高槻成紀先生(保全生態学)から、大した器具がなくても生き物たちの繋がりを調べられると聞いて熱くなり、指導を受けながらタヌキと糞虫を中心に、仲間と調べ始めて3年半になります。
 タヌキが草木の実を食べれば糞の中に種が残り、いつか芽を出し、群落ができます。そこに虫や動物もやって来て、その土地特有のバランスの取れた生態系ができる。タヌキや虫の視点で文明社会を見てみると、バランスを崩しているのは人間。辺境の伝統社会では人間もこの生態系にうまく組み込まれていました。
 宇宙やDNA、生き物の進化など自分たちでは調べられないこともあるので、専門家を招く公開講座も月に4回ほど開いています。
アンデスの先住民に伝わる、好きな民話がある
 「ハチドリのひとしずく」という話です。山火事が起きて他の動物が逃げる中、ハチドリは小さなくちばしで水を落として消火しようとする。バカにされるんだけど「僕は、僕ができることを一生懸命やっているんだ」と言う。それが他の動物の心を動かすんです。私も身の丈に合った活動を続けていきたいと思っています。

by mint-de | 2019-07-12 11:45 | 詩と言葉から

堀文子の言葉から②

描くものに対しては、感動とか興奮といった生易しいものではなく、逆上に近いような感情を持っていないと、人の魂など打たないのです。ただ、いいですね、とか、きれいですね、と言っているくらいでは絵は描けません。
今の人たちは、逆上することが恥ずかしいのではないでしょうか。文明というものは、物を知っていることだと思うから、
「そんなこと知っていますよ」
という顔をして、知識だけで物を見ている。だから、何かに逆上するということがないのかもしれません。
人間がマンモスと闘いながら洞窟で生きていた時は、毎日が命がけで、人生はもっと鮮烈な輝きを放っていたのではないでしょうか。
自然界の生き物は、いまだにそうだと思います。例えばあんな小さな蚊でも、こちらが殺してやろうと思った時には、身を隠してしまって、簡単にはつかまりません。あれは命がけで生きているからでしょう。
「こいつはそろそろ殺虫剤を持ってくるぞ」
などと、頭で考えているわけではないのでしょうけれども、こちらの殺気というのを感じとるのだと思います。いったいそれをどこで察知するのかはわかりません。けれども、大雪が降っても、ちゃんと時期が来れば牡丹の花が咲くように、自然界のものたちは生きるということにもっと懸命で真摯であるような気がします。人間だけが知識を得て、便利さを求めて、本来の生物としての能力をどんどんそがれているように思えます。
わたくしは山の獣、草木、花々が、日々生と死を分けながら生きているさまを観察してきて、その原始の感性とでもいうものに少しでも近づきたいと思っています。そうした本来の生物としての能力を発揮しているときこそ、命は輝くのではないかと考えております。
物を知らないときがいいのです。物知りになるということは、ろくなものではないと思います。


  (堀文子 『私流に現在を生きる』から 中央公論新社 )
by mint-de | 2016-01-22 14:39 | 詩と言葉から

旅 感動するココロ

 日常には含まれていない旅先で、私は自分がうつくしいと思うもの、その正体を自分でも知らない。自分が何を見て泣きたくなるのか、わからない。壮大な光景でも、世界文化遺産でも、人の笑顔でもない。もちろん、それらのときもあるけれど、そうしたものでないときもある。
 だんだんわかってきたことは、私の思ううつくしいの反対が、汚いでも醜いでもないこと、それから、そのうつくしいものにのみ、自分の心が動かされるということである。私はまだまだ見たい。自分がうつくしいと思うものの正体を知りたい。それは、一ヵ月の旅でも、一泊の旅でも、触れられるものなのだと最近になって知った。


(角田光代『降り積もる光の粒』あとがきから・文藝春秋)


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by mint-de | 2015-03-05 21:03 | 詩と言葉から

「純と愛」のセリフから


「自分がいつも正しいと思っている人間は、成長をやめたと言っているのと同じです」


(遊川和彦脚本 NHKドラマ「純と愛」から)


今日の朝日新聞朝刊「TVフェイス」では、NHKの朝ドラ「純と愛」に出演中の吉田羊さん(純の指導係桐野)を紹介していた。
その記事中に載っていた桐野のセリフ。
自戒する意味で、ときどき思い出したい言葉だ。
by mint-de | 2012-10-27 15:55 | 詩と言葉から

堀文子の言葉から①

日本画家の堀文子さん。絵そのものはあまり拝見したことはないのだけれど、とても美しい色を使われているという印象がある。
そしてご高齢ながらとてもお元気で、語られる言葉に精神的な強さを感じさせる方だ。
求龍堂発行の『堀文子の言葉 ひとりで生きる』を読むと、軟弱な背中をビシビシ叩かれているような気持ちになる。

「築き上げたものを壊すのは惜しいものです。
お金も、物も、人とのつき合いさえも、
捨てることになるのだから。
でも失った無駄が心の肥やしになるはずです。
古い水を捨てなければ新しい水は汲めません。」

「みんなひとりが寂しいといいますが、人といれば本当に寂しくないのかしら?
人はそもそも孤独なんです。」

「現状を維持していれば無事平穏ですが、
新鮮な感動からは見捨てられるだけです。」

「美徳を吹聴してはなりません。美徳自慢は無粋の限りです。
ばか正直。ばか丁寧。くそ真面目。美徳にそんな言葉をつけて「過ぎる」ことをいましめていた昔の人の粋な感覚に圧倒されます。」


  (堀文子 『堀文子の言葉 ひとりで生きる』から 求龍堂)
by mint-de | 2011-12-08 14:39 | 詩と言葉から

久田恵の言葉から

  現実の生活に行き詰まったとき、そこにとどまっていては、何も見えない。だけど、自分からはなかなか出ていけないものです。そんなときは、ファンタジーの力を借りて跳んでみよう、と思うようになりました。それは何も別の場所に行くことじゃない。赤毛のアンが平凡なくぼ地を「スミレの谷」と名づけたように、今いるここを、自分にとってすてきな場所に変えていく、ということです。
 大事なのは、誰かに幸せにしてもらおうと思わず、一人でも自由に、楽しく生きられる力を育てること。いまも日々、練習中です。


   (2011年7月8日付朝日新聞夕刊 「人生の贈りもの」 久田恵 「行き詰まったとき、跳ぶ力を」から)
by mint-de | 2011-07-09 15:46 | 詩と言葉から

山田太一の言葉から

僕は人間の願いやファンタジーには、丸ごと「人間」というものが語られているように思います。
つまり人間は真実だけでは生きられないのであって、そういう願いを、物語を必要としているのではないでしょうか。
真実を追求することが善だとよく言われますが、もし、人生が真実だけだったら、やっていられない。僕だってやりきれないことだらけです(笑)



(2011年2月12日付朝日新聞be 映画「ヒアアフター」の広告から)

by mint-de | 2011-02-12 13:33 | 詩と言葉から

酒井雄哉(天台宗大阿闍梨)の言葉から

「自分なりに腑に落ちると、人はついそこで考えるのをやめにしちゃう。でも、答えがわからないといつまでも考えるだろう。肝心なのは答えを得ることじゃなく、考え続けることなんだな」

「毎日立って前を向いて歩いているでしょう。そうすると、目の前にあるものはすべて真正面にあるものだと思い込んでしまうんだよ。寝ていて見える天井だって、天井には見えず、壁に見えてしまう。
習慣っていうのはそれくらい人の感覚を狂わせてしまうんだな。たった90日であってもだ。人間のものの見方や心のありようっていうのは、いろんなものでどうにでも左右されちゃうということを学んだんだ。
だから自分から見て、どんなに正しいと思えることでも、もしかしたらいろいろなことにとらわれてそう見えているかもしれない。自分がどんな立場でそれを見ているのかということをいつもいつも確かめないといけないんだな」 


  (酒井雄哉 『一日一生』から 朝日新書)


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by mint-de | 2010-11-04 16:02 | 詩と言葉から

ミネット・ウォルターズの言葉から

人間の勝利は、

あとからあとから襲いかかる

ささやかな敗北を敢然と受けとめ、

できるだけ傷つくことなく

生きながらえることにある



(ミネット・ウォルターズ 成川裕子訳 『氷の家』から 東京創元社)


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by mint-de | 2010-05-22 13:26 | 詩と言葉から