碧草の風

mintmmks.exblog.jp
ブログトップ | ログイン

雨は土地の名を、街の名を、通りの名を恋人のようにもっている。
雨は、街の言葉だ。雨の言葉が語るのは、街角にかくれている街の物語だ。
雨に街が滲んでいる。滲んだ光景がいつかこころに滲んでいる。
悲しみのように、街の雨はこころにしみをのこすのだ。


(長田 弘 『記憶のつくり方』 晶文社・「雨の歌」から)

d0129295_11212946.jpg
# by mint-de | 2007-09-22 15:28 | 詩と言葉から

土に帰る

この世に生きるすべてのものは、いつか土に帰り、また旅が始まる。有機物と無機物、生きるものと死すものとの境は、一体どこにあるのだろう。
いつの日か自分の肉体が滅びた時、私もまた、好きだった場所で土に帰りたいと思う。ツンドラの植物にわずかな養分を与え、極北の小さな花を咲かせ、毎年春になれば、カリブーの足音が遠い彼方から聞こえてくる……そんなことを、私は時々考えることがある。


  (星野 道夫 『長い旅の途上』 文春文庫)


d0129295_11255469.jpg
# by mint-de | 2007-09-22 15:23 | 詩と言葉から

八木重吉の詩から①  「貫ぬく 光」 



はじめに ひかりがありましたd0129295_11265653.jpg

ひかりは 哀しかったのです

ひかりは

ありと あらゆるものを

つらぬいて ながれました

あらゆるものに 息を あたえました

にんげんのこころも

ひかりのなかに うまれました

いつまでも いつまでも

かなしかれと 祝福(いわれ)ながら

# by mint-de | 2007-09-22 15:20 | 詩と言葉から

孤独


強いというのは

存在の孤独を

本能的に

知っているということである。

  「私」と「あなた」は

互いに他者であって

決して同一ではないということに

    耐えうるということである。


  (高橋たか子 「私のヨーロッパ体験」から)



d0129295_1232172.jpg

# by mint-de | 2007-09-22 15:11 | 詩と言葉から

努力と解決

確かにいくら努力しても報われないとか、不運としか言いようがないとか、そのような人が居られることは事実で、まったくお気の毒なことである。
あるいは、努力しても努力しても解決の緒さえ見つからぬときもある。
しかし、翻って考えてみると、「努力すればうまくゆく」などということが本当に正しいのか、なぜそうなのかわからなくなってくる。
私は来談される沢山の人たちのお話を聴いていて、人間が自分の努力によって、何でも解決できると考える方がおかしいのではないか、と思いはじめた。


(河合隼雄 『こころの処方箋』 新潮文庫) 以下、青文字は本書から。

河合先生は、上のような考えを抱いていたときに、この「ものごとは努力によって解決しない」という言葉に出合ったそうである。
これは、インド生まれの宗教家・哲学者のクリシュナムルチの言葉だそうだ。

さらに、河合先生はこう続ける。

子どものためにできる限りの努力をした、などという人に会うと、この人は、解決するはずのない努力をし続けることによって、何かの免罪符にしているのではないか、と思わされることがある。
それは、何の努力もしないで、ただそこにいる、ということが恐ろしいばかりに、努力のなかに逃げこんでいるのではないか、と感じられるのである。
努力などせずに、子どものために父として母として、そこにいること、これは凄く難しいことだ。


この言葉は、親として肝に銘じたい言葉である。でも、どうしていいかわからないときは、解決策を見出そうとあがくのが普通です。じゃあ、どうしたらいいの? 
先生は、こうおっしゃっている。

解決などというのは、しょせん、あちらから来るものだから、そんなことを「目標」にせずに、せいぜい努力でもさせて頂くというのがいいようである。
# by mint-de | 2007-09-22 15:09 | 詩と言葉から

ひっそりとした幸福

悲しみのあとで  (ウンベルト・サバ 須賀敦子訳)
 
このパンには思い出の味がある、
港のどこより廃れて混みあった辺りの、
貧しい居酒屋で食べるこのパンには。

ビールの苦さがうれしい、
帰りがけに立ち寄って、
雲のかかった山々と灯台をまえにすわると。

苦悩にうちかったぼくのたましいは、
あたらしい目で、むかしの夕暮を眺め、
妊娠した妻といっしょに水先案内人など見ている。

それから、古びた木の部分が太陽に
ちかちかする、二本のマストとおなじくらい
背の高い煙突をつけた、船を。まるで、

二十年まえ、子供のときに描いた絵みたいな。
そのころ、手に入れるとは考えてもみなかった、
こんなうつくしい、甘い苦痛に満ちた人生、

こんなに、ひっそりとした幸福。



d0129295_11322490.jpg
# by mint-de | 2007-09-22 15:03 | 詩と言葉から

心の湖

かなり前の朝日新聞「天声人語」に載っていた社会学者の見田宗介さんの言葉。
とても素敵な文章だ。自分の「湖」を深いものにできたらいいな。


「人はだれでも自分の中に湖をもっていて、その深さとか色調とか涼しさとか透明度とかを、その人の生の最後の瞬間まで、加えたり変幻したりしている。人に話をするということは、その人の中の湖に話をすることであるように思う。」 (見田宗介)


d0129295_1133239.jpg
# by mint-de | 2007-09-22 14:59 | 詩と言葉から

海への郷愁

  
   (ジャン・コクトー 堀口大学訳)


  
   私の耳は貝のから


      海の響きをなつかしむ


 
d0129295_14465225.jpg 
# by mint-de | 2007-09-22 14:47 | 詩と言葉から